最後に女性アナウンサーは絞り出すように言う。
「この数年間、Aさんはずっとそんなことばかりしてきた。上司である港(浩一)社長を含め、彼らは20年以上ずっと同じような遊び方をして、この時代に取り残されている。こんな事態に発展した今でも『何が悪いの?』という感覚なのでしょう」
コンプライアンスの軽視が
フジテレビを死に至らせる
中居のトラブルを「個人間の問題」として軽く考えていたフジテレビ経営陣の目論見は甘過ぎた。
女性を斡旋するかのような社員の言動、問題の隠蔽に奔走する企業風土は、フジテレビ自体のコンプライアンス問題へと発展していったのである。
中居のスキャンダルを知りながら起用を続けたこと、幾多の不祥事を隠蔽してきた流れを見て、これは不祥事企業の典型例だと私は感じた。
社内通報窓口や上司がスキャンダルを隠蔽するためにしか働かないため、次は外部メディアの力を借りて告発をしようと考える。多くの企業不祥事はそのような経緯をたどって問題が外部流出してきた。
フジテレビは多くの企業不祥事を報道し批判してきたにもかかわらず、自社問題にはまったくその経験を活かせなかったのである。
例えば2023年に世間を騒がせたビッグモーター事件。同社の会見では報道記者から多くの厳しい質問が投げかけられたことは記憶に新しいだろう。

しかし、フジテレビ記者は今後、不祥事企業に対して「コンプライアンス意識はどうなっているんだ?」、「社長の責任はどうなんだ」といった趣旨の質問を行い難くなるだろう。
自社はトラブルを隠蔽していたわけで、相手から「フジテレビではどうだったんですか?」と切り返される可能性が出てきたわけだ。こうなると報道番組やワイドショーで企業不祥事が扱えなくなる。
つまりコンプライアンスを遵守できないメディアは、報道機関として「死」を迎える可能性がある時代になったとも言えるのだ。
こうした危機意識は私だけが感じていたわけではなく、フジテレビ問題を取材していた記者も同様だったし、フジテレビ社員からも同じ言葉を聞いた。
しかし港浩一社長以下、フジテレビ経営陣はいまそこにある危機を認識しないまま、破滅への道をひた走ることになるのである――。