スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。その刊行を記念して、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社三浦岳)

作業空間を最適化する
――『一点集中術』を実践するにあたっては、スマホとの付き合い方がカギになりますよね。
栗木さつき氏(以下、栗木):はい。最近のデータによると、日本人の20代で1日3~4時間、50代で1~2時間程度スマホを使っているみたいです。この数字を見て、私たちは人生のかなりの時間をスマホを見て過ごしているのだと実感しました。この時間を減らさないことには、本当に充実した人生を送れないように思います。
とくにSNSは、時間があるとつい見てしまいます。スマホを仕事部屋に置いている限り、1時間に1回くらいは見てしまっています。
――私も原稿整理などで少し難しいところにぶつかったりすると、気がついたらSNSを見ています。
栗木:わかります。まさにそうしたデジタルデバイスの誘惑に対抗するために、本書の著者は物理的な対策を推奨していますよね。デバイスが集中力を奪う事態が生じないよう、先手を打つことが重要だと説いています。
電話やメール受信など、音が鳴りうるものはすべてミュートにする。じつはミーティングのないときでも、私はたいていミュート設定にしている。メッセージやSNSの通知設定もオフにしている。――『一点集中術』より
栗木:著者は、スマホに対する「フェンス」を設けるといいとアドバイスしているので、集中したいときはスマホを他の部屋に置くようにしています。これは効果覿面です。
スマホ漬けでメンタルも落ち込む
――スマホばかり見ていると、気分も沈んできますよね。暗いニュースや争いごとばかり目に入ってきて。栗木さんはスマホから自分を守るために、ほかに何かしていることはありますか?
栗木:私の場合、旅行やハイキング、登山に行く機会があるのですが、それがデジタルデトックスのいい機会になっています。
登山をしているときは、目の前の一歩を進まないと怪我をしてしまうので、すごく集中するんですよね。自然に触れると、俯瞰して自分を見れるというか、それだけでメンタルがパッと切り替わります。
そうして1日を終えて帰宅すると、丸一日スマホを見ていない状態ですが、実際にはそれでも全然困りません。
家に帰って夜に少し見て寝るだけなのですが、「なんであんなにいつもスマホを見ていたんだろう」と、普段の生活がいかに無駄なことに時間を費やしているかを痛感します。
――登山みたいに、強制的にほかのことに集中できる環境に身を置くのがいいんですかね。
栗木:本当にそうです。スマホには意志の力では勝てないので、何かしら「環境の力で対策する」というのはいまや必須のことだなと、この本を訳して改めて思いました。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)