スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。その刊行を記念して、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

日々の時間の使い方を「意識的」に選ぶ
――栗木さんが本書を翻訳されて、とくに重要だと感じた著者の教えは何でしょうか。
栗木さつき氏(以下、栗木):この本が言っていることとは、要は「時間の過ごし方をつねに意識的に選びなさい」ということかと思います。自分の人生を豊かにするために、次に取る行動を何にするかを選択しなさいと。
「いまは子どもと一緒」「いまは仕事に集中しよう」「いまはSNSを遮断しよう」という行動の選択の積み重ねで、人生が充実していくのだと、この本を読んで感じました。
――著者は「いま、ここにいること」というふうに表現していますね。
栗木:はい。たとえば短い時間でも、相手の目を見て、相手の話に集中して耳を傾けるという一点集中が、人との信頼関係を築く上でも非常に大事なのだなと思います。
たとえば、上司と部下の関わりでも、短い時間でもしっかり集中して話を聞いてくれる上司は信頼してもらえると本書に書かれていましたが、それは親子関係にも通じます。5分でも相手の目を見て、相手の話に集中することが大事です。
また、仕事や人間関係において、対応が難しい問題に直面したとき、その人のことを集中して考え、解決策を導き出したら、いったん忘れてその人のことで延々と悩まないというふうにすることも、精神衛生上必要なのかなということも思いました。著者はこう言っています。
そうした行為は、「いま」という瞬間を「ここ」で生きる邪魔をする。
私たちには過去を変えることも、未来を予言することも、他人を意のままに動かすこともできない。ただ、いまという瞬間、シングルタスクに集中し、自分の人生、仕事、周囲で渦巻いている世界を、よりよい方向に向けることだけが可能なのだ。――『一点集中術』より
「いま」を生きれるように引き戻してくれる言葉
栗木:この指摘にはハッとしました。ネガティブな思考を続けていること自体が「怠惰」だというんです。厳しい言い方ですが、たしかに何も進まないことにこだわっていてもしょうがないですしね。
――メンタル的にもよくないですよね。モヤモヤとした悩みに引っ張られていまを楽しめなくなってしまうことはよくあるので、そんなときはこの2文字を思い出して、メンタルをシャキッとさせるようにします。
栗木:そうですよね。問題に対して自分の考え方や対応の方針を決めたら、そこで、ネガティブな思考はいったん切り捨てることが大事なんだと思います。難しいとは思いますけど、ずっとモヤモヤと同じ問題にとらわれているときは、「これは怠惰な行為なんだ」と思うことで、自分に歯止めをかけてもらえればなと思います。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)