スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。その刊行を記念して、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

集中は「幸せな時間」につながる
――『一点集中術』では、何か一つのことに没頭しているとき、人は「フロー状態」に入り、大きな満足感や幸福感を覚えると説かれています。
栗木さつき氏(以下、栗木):著者は、「一点集中」は幸せな時間につながるとしていますよね。本書には以下のようにあります。
一点集中術のセミナーで私がこの問いを投げかけると、じつにさまざまな回答が得られる。絵を描いたりものづくりに取り組んだりしているとき、スポーツをしているとき、愛する人と一緒にいるとき、趣味を楽しんでいるとき。
さまざまな回答があり、その範囲は無限だ。だが、どの回答にも1つだけ共通点がある。
誰もがその体験に没頭しているからこそ、満足感を覚えているのだ。完全に集中しているからこそ、幸せな気持ちになれる。――『一点集中術』より
――栗木さんは、心から楽しめて没頭でき、フロー状態に入りやすいと感じる活動はありますか?
栗木:そうですね。日々の活動で言えば、ジョギングをしたり、テニスをしたりしているときです。テニスをしているときなんて本当に集中して、ゲームに夢中になります。
あと、大きめの公園や、大自然を感じられるような高い山の上に行くときも、どっぷりとその場に没頭できます。五感を研ぎ澄まして、自然の音を聞いたり、空を眺めたり、日没を見たりする時間は、本当に幸せな時間です。三浦さん(編集)は、いかがですか。
――私もたまにジョギングをしています。走っている間、基本は苦しいのですが、少し瞑想状態になるような感覚もあります。また、走っているといつもより自然をよく感じられますね。川面が陽を映してキラキラと光っていたり、海のほうからザーッとぬるい空気が流れてくるのを肌で感じたり。
「最低15分」はコレをする
栗木:普段デスクで仕事をしているとわからない感覚ですよね。私は以前、自然の中にいると心身が元気になるという内容の『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる』という本を共訳で出したことがあります。その中には、集中力維持のために、ノルマだと思って1日に最低15分はお昼休みに散歩し、公園や街路樹があるところへ行くといいという主旨のことが書かれていました。
――私も拝読しました。以来、ランニングしているとき、土の道を見つけたら必ずそこを踏んで走るようにしています。そうすると土壌菌を吸収できて、ストレスがやわらいだりするとも言われているんですよね。
栗木:土の上を歩くのはすごく大事だと思います。とくに雨上がりがいいとも書かれていました。さらに、集中力を高める環境として、水の音と鳥のさえずりも脳にすごくいいそうです。
都会の住宅街でも、朝起きて窓を開ければ、カラスやほかの鳥の声がどこかしらから聞こえてきます。朝イチでスマホを見るのではなく、空を眺めて鳥のさえずりに耳を澄ませる習慣をもつだけで、一日の始まりの質が変わります。
いきなりSNSやニュースに触れてざわついた気持ちで始めるのか、自然に触れてすっきりした気持ちで始めるのかで、その日のメンタルは大きく違ってきます。スマホから離れ、五感を使う時間を増やすことが、日々の満足につながるのだと感じます。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)