「騙されない」は
ビジネスで武器になる

 蛇足ながら、メールの文面に関してもうひとつ述べておくと、“文章の飾り立て”に注目すれば、その書き手の「ナルシスト度」も見抜くこともできますよ。

 米ウェスタン・ニューイングランド大学のキャサリン・ディロンが50名の大学生に、まずはナルシストの度合いを測定する心理テストを受けてもらい、さらに「親友にバースデー・カードを送るとしたら、どんな文章を書くと思うか?」をイメージして、実際にカードを書いてもらいました。

 それから、カードで使用されている単語や表現と、ナルシストの得点との関連性を調べてみると、女性ではナルシスト得点の高い人ほど、“文章の飾り立て”が見られました。エクスクラメーション・マーク(「!」)をつけたり、アンダーラインを引いたりする傾向があったのです。男性にはそういう傾向は見られませんでした(※2)。

 ナルシストは、服装も派手ですし、アクセサリーもたくさん身につけますが、文章を書くときにもその性格が反映されてしまうのでしょう。だから、いろいろと文章を飾り立てようとしてしまうのです。

 というわけで、メールの中にいろいろなマークや強調がなされているのなら、「ひょっとしたらこの人はナルシストなのかも?」と予想できるわけです。

 ビジネスシーンは、杓子定規な「建前」で溢れています。その裏に「本音」があることを想定し、予防的仮説として備えることはリスクヘッジです。「騙されない」ということは、成果を出したり、キャリアアップをしたりする上で重要なビジネススキルになるはずです。

【参考文献】

※1 Oppenheimer, D. M.  2006  Consequences of erudite vernacular utilized irrespective of necessity: Problems with using long words needlessly.  Applied Cognitive Psychology ,20, 139-156.
※2 Dillon, K. M.  1988  Narcissism and embellishments of signature.  Psychological Reports ,62, 152-154.