「アメリカでみかんを売る方法を教えて」→できるコンサルのすごい答えとは?
「1つに絞るから、いちばん伝わる」
戦略コンサル、シリコンバレーの経営者、MBAホルダーetc、結果を出す人たちは何をやっているのか?
答えは、「伝える内容を1つに絞り込み、1メッセージで伝え、人を動かす」こと。
本連載は、プレゼン、会議、資料作成、面接、フィードバックなど、あらゆるビジネスシーンで一生役立つ「究極にシンプルな伝え方」の技術を解説するものだ。
世界最高峰のビジネススクール、INSEADでMBAを取得し、戦略コンサルのA.T.カーニーで活躍。現在は事業会社のCSO(最高戦略責任者)やCEO特別補佐を歴任しながら、大学教授という立場でも幅広く活躍する杉野幹人氏が語る。新刊『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』の著者でもある。

「アメリカでみかんを売る方法を教えて」→できるコンサルのすごい答えとは?
経営コンサルタントというと「フレームワーク」を駆使するというイメージが一般に定着している。フレームワークとは、考えるときの枠組みだ。もっとわかりやすく言うと、穴埋め問題だ。
その枠組みに沿って穴埋め的に考えていくことで、考えるのをスムーズにするためのツールだ。たとえば、有名なフレームワークとしては、次のものなどがある。
・3C :Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)
・4P :Product(商品)、Price(価格)、Promotion(宣伝・販促)、Place(流通)
・PEST :Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)
・5フォース:業界内の競争、新規参入の脅威、代替品の脅威、顧客の交渉力、サプライヤーの交渉力
・PDCA :Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)
これ以外にも、フレームワークはさまざまにある。しかし、デキるコンサルタントほど、伝えるときにフレームワークは気にしない。もっと大事なことがあるからだ。
仕事ができる人がフレームワークよりも大事にすることとは?
むかし、新人コンサルタントたちの研修で、あるケース問題を出していたときだった。
ケースの内容は「クライアントは愛媛県のみかん農家である。クライアントは米国市場に参入し、米国でビジネスを成功させたいと考えている。なにをすべきか?」だ。
普通のコンサルタントたちは、新人といえども、まずは言葉の定義を気にする。このケース問題であれば「成功」の定義だろう。成功の指標は売上、利益、成長率、シェア等、なんなのか。そして、その指標においてどの水準を達成すると成功と言えるのか、などだ。
しかし、それらはケース問題を解く上での前座に過ぎない。本丸は、いかに「なにをすべきか?」に答えるかだ。
しばらくして、普通の新人コンサルタントたちは、フレームワークを使って語り始める。
「3Cで考えてみますと、オレンジが競合になって…」
「4P全体だと、まずは商品が…、次に価格が…」
などなど。しかし、これらは実践ではまったく使えない。フレームワークは、考えや分析の枠組みであって、答え自体ではないからだ。
そんなときに、一人の新人コンサルタントが自分の考えを述べた。
「冷凍みかんで、米国で勝負しましょう」
まわりの新人コンサルタントたちからすると、意表を突くものだった。そして、「ほかの可能性もあるのでは」といった反論も始まりそうだった。
このケース問題に正解はない。どんなベテランのコンサルタントが出したアイディアでも、多少の確率のアップはあるかもしれないが、必ずしも米国でのみかん事業の成功を約束しないだろう。新規事業とはそのようなものだ。
しかし、このケース問題では、必ず守るべきことがある。それは「相手の論点、すなわち、相手の問いにストレートに答える」ことだ。
問題解決は、フレームワークで整理することでは生まれない。
問題解決は、問いに答えを出し、その答えを速やかに実行してみることで生まれる。
このため、相手の問いにいかにストレートに、それも相手が速やかに実行できるように相手に伝わりやすいシンプルな1メッセージで伝えられるかが、問題解決では大事なのだ。
この研修では「冷凍みかんで、米国で勝負しましょう」だけが、問いにストレートに答え、それを相手に伝わりやすいシンプルな1メッセージで伝えていた。
その後、この冷凍みかんのコンサルタントは、あっという間に成長し、シニアなコンサルタントに昇進していった。
シンプルな1メッセージを届けよう
フレームワークは考えたり、分析したりするための手段に過ぎず、問題解決の答え自体にはならない。
問題を解決するのは、フレームワークではなく、どこまでいっても答えとその速やかな実行だ。
コンサルというとフレームワークというイメージがあると思うが、仕事ができるコンサルタントはフレームワークに拘らずに、答えに拘る。
そして、相手が速やかに実行に移れるように、相手に伝わりやすいシンプルな1メッセージで届ける。
この「答えとその速やかな実行」への拘りは、コンサルに限らず、仕事ができる人の一つの共通点だ。問題を解決したければ、フレームワークよりも、答えをシンプルな1メッセージで届けることに拘ろう。
(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)