アンパンマン歌詞「命が終わるとしても」にテレビ局がNG!…史実でもやなせたかしは歌詞を直していた【あんぱん第128回】『あんぱん』第128回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は第128回(2025年9月24日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

アンパンマンの生き字引みたいな人、現れる

 ある日、嵩(北村匠海)のマンションに訪ねて来た人がいた。

 その人、武山恵三(前原滉)は「アンパンマンと申します」と挨拶し、のぶ(今田美桜)を面食らわせる。

 武山はアンパンマンが好き過ぎて、おかしなテンションになっていた。

 のぶ「気をつけないと顔食べられちゃいますよ」
 武山「事件になりますね。気をつけます」
 ↑このやりとり好き。

 武山はテレビマンで、アンパンマンをアニメ化したいと企画書を持ってきた。彼のアンパンマン好きは相当なもので、かびるんるんとか、ふけつまんとかマニアックなキャラを挙げてくる。しかも初出がいつだったか記憶している。

「アンパンマンの生き字引みたいな方ですね」とのぶ。

 こういうとき、誰でも知っている人気のキャラを好きだと言えば社交辞令かと疑われることもあるだろう。意外な角度から攻めると効果的。ただ、武山は作戦でもなんでもなく純粋に好きなのが伝わってくる。

 だが、嵩はさくっと断る。

 以前もアニメ化の話があったが、改変を提案されて、許諾できなかったのだ。アンパンマンを、敵をこてんぱんにやっつけるヒーローにするなんて嵩は絶対にできなかった。アンパンマンの歌詞で言えば「そんなのはいやだ!」であろう。そういえば、第127回の八木(妻夫木聡)も戦争の回想で「(俺たちこのままじゃ死んじまう)そんなの嫌だ」とやなせ節になっていた。

「僕はアンパンマンを傷つけられたくないんだよ」と嵩は言う。武山がアンパンマンをどんなに理解していても、テレビ局の上層部が理解していなければ企画はねじ曲げられてしまうと過去の経験で嵩はわかっているのだろう。

 武山は諦めず再び現れる。だが残念なことに――