アンパンマン歌詞「命が終わるとしても」にテレビ局がNG!…史実でもやなせたかしは歌詞を直していた【あんぱん第128回】

アンパンマンの声は、ホンモノの戸田恵子が演じている

 妥協せずにいいものを作るため、2年をかけて、1988年。『アンパンマン』のアフレコに嵩は立ち会う。

 原作あっての作品なので、原作を尊重することは当然、最重要課題だとは思うが、原作者があまりにもいろいろ口を出してくるのも困りものであろう。テレビ局の人もやなせたかしが妥協しなくて苦労しただろうと思う。まあ空前の大ヒットコンテンツになったのだから、結果オーライでなにより。

 アンパンマンの声を担当するのは戸部由子(声:戸田恵子)。彼女は感極まってアフレコ中に泣いてしまう。
アンパンマンは実名だが、戸田恵子は名前が変わっていて、でも声はホンモノの戸田恵子が演じている。ややこしい。

 演じた人の名前はなぜ出さないのだろう。俳優さんではないのだろうか。

 ただ、戸田恵子が無理に若い頃の自分として出てこず、声で演じることは、性別も年齢も自由に演じることができる声の演技の可能性を感じられて、とても良かった。

 アンパンマンを傷つけられたくない。テーマを改変されたくない。そんなやなせたかしの思いを大切にするあまり、やなせの発言をひたすら抜き出して、余計な創作を入れないように気を遣ったのが『あんぱん』で。そのため、記録のない暢をモデルにしたのぶが自由に羽ばたけなかったように思う。主人公の扱いに関して、ほんとうにこれで良かったのか、評価は残り2回にかかっている。

 もう一点。詩にテーマを込めたやなせには悪いが、『アンパンマンのマーチ』がヒットしたのは、歌詞よりも三木たかしの曲の力だと思う(作詞:やなせたかし 作曲:三木たかし Wたかしだった)。

 もちろん歌詞はすばらしい。本来、いい曲だなとご機嫌で聞いて、改めて歌詞を読めば、いいこと書いてあるなあという感じだったのが、昨今のきなくさい情勢下、やなせがぼかさず隠さず、ストレートに書いたメッセージ性が必要になってきているのだろう。実際に戦争を体験した人の実感ある言葉をいまこそ広めないと。

アンパンマン歌詞「命が終わるとしても」にテレビ局がNG!…史実でもやなせたかしは歌詞を直していた【あんぱん第128回】