アンパンマン歌詞「命が終わるとしても」にテレビ局がNG!…史実でもやなせたかしは歌詞を直していた【あんぱん第128回】

残る“ドラマの最大の謎”

 嵩は留守だった。

 「また来たの」

 嵩は武山を信用していなかったが、のぶが「いままで企画をもってきたプロデューサーさんとは違うと思う」と熱心に推すものだから、アニメ化の話を進めることにする。

 武山がアンパンマンをもっと多くの人に届けたいと思ってくれていることにのぶは心打たれたようだ。彼女もアンパンマンの布教に熱心だから響いたのであろう。

「弱くてカッコ悪いアンパンマンを尊敬せずにはいられないんです」

 武山の言葉を嵩に伝えるのぶ。武山自身が弱そうでかっこよくなさそうなので(失礼)説得力がある。

 嵩は立ち上がりテレビ局に電話する。

「僕はねあなたのこともテレビ局のこともまだ信用してません。でも、うちのかみさんのことは信用してしてるんです。だからやりましょう」

 嵩はのぶの言うがまま。世間の愛妻家ってこんな感じである。

 のぶのモデルの暢の資料がないからといって、のぶの言動がひたすら「アンパンマン」の後押しばかりしているのがこのドラマの最大の謎である。モデルのやなせたかしの主張が強く、そっちに引っ張られ、のぶを造形できなくなってしまうようだ。

 アニメ化を了承した嵩は、まず主題歌「アンパンマンのマーチ」の歌詞を考える。さすが詩人。詩を考えながら、部屋に飾ってある寛(竹野内豊)や千尋(中沢元紀)の写真を嵩は眺める。『あんぱん』におけるアンパンマンは彼が出会ってきた大事な人たちの要素でできている。

「なんのため生まれて なにをして生きるのか 答えられないなんてそんなのはいやだ!」――できた歌詞には寛の言葉などが盛り込まれていた。 

 ここは歌詞と回想シーンがオーバーラップして感動シーンになるかと思ったら、意外とあっさりだった。

 嵩の渾身の歌詞だったが、テレビ局の上層部が懸念を示した。子どもの番組で「命が終わるとしても」という歌詞はふさわしくないと。

 武山はこれがアンパンマンの真髄だとわかっているので、テレビマン人生を賭けてねじ伏せると熱く語る。

 すると嵩は、そんなことをする必要はないと止め、歌詞を書き直すことにする。アニメ化を許可したからには、みんなを喜ばせたいと言うのだ。

 だったらアニメ化をやめる!と言って武山を困らせるのではなく、これだけアンパンマンを愛している武山の立場も慮り、誰も被害を被らないようにする嵩の人間性の高さ。

 歌詞の書き直しは、実際にやなせたかしが行ったことだった。

 さあ、いよいよ『アンパンマン』のアニメ化だ。戸田恵子は再び出るのか?