
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第130回(2025年9月26日放送)の「あんぱん」最終回レビューです。(ライター 木俣 冬)
のぶはなんのために生まれて なんのために生きたのか。
「時が来ればお返しする命」
RADWIMPS野田洋一郎の歌詞が染みた。
異色な主題歌とタイトルバックではじまった『あんぱん』は、異色な主題歌『賜物』で締められた。
当初、極めてスピーディな主題歌についていけないとか朝ドラらしくないとかいう批判的な声も少なくなかった『賜物』。ハチキンのぶの早い走りのようなこの曲に込められた死生観には学ぶべきものが多かったし、とりわけ、あとから公開された後半部分を聞くと、印象が深まる。曲調が変わったところの、「時が来ればお返しする命」という歌詞が刺さった。
生き物にはすべて寿命があって、永遠などない。驕れる者は久しからず。無敵を誇れる者などいないというのは全人類への警鐘であり、文明批判でもあり、それでも生きている限り、死ぬまで必死で生き続けるのだという覚悟である。何にこの命を使うのか。そんなことを考えさせられる。
それはつまり「なんのために生まれて なんのために生きるか」である。
のぶ(今田美桜)が最後の最後まで、なにもしていないように見えたのは(『アンパンマン』の布教活動はしていたが)「なんのために生まれて なんのために生きるか」を問い続けて生きる象徴だったからだろう。
のぶは「なんのために生まれて なんのために生きるか」の問いそのものだった。
自分の身体に溢れる膨大なエネルギーを何に使っていいのか持て余しながら生き続けたのぶは、病気になってしまう。
病気は、モデルの暢の人生をなぞっている。『アンパンマン』がアニメになる頃、暢は病気になっていた。病院でアンパンマングッズを配っていたのも史実通り。幸い、治療が功を奏して、延命した。