17時44分、私たちは配置につきました。車担当の宮本は居酒屋から少し離れたコインパーキングに停車し、バイク担当の田中は目立たないように路地裏でバイクで待機、私は店の出入りを監視します。

 面取りのため、辻岡さんは店の前で仲間氏の到着を待っています。

 居酒屋の周辺状況が確認できる宮本からインカム越しに「片岡さん、周辺と通行人に異常なし。対象者の来店ルートを複数想定し、監視ポイントを確保済みです」

 私は応じて「了解。こちらは辻岡さんが見えている。対象者は間もなく現れる。集中力を切らすな」

 静かな緊張感の中、私は仲間氏が来るのを待ちました。

 調査において大事な面取りは、最も神経を使う局面の一つです。対象者がいつ、どこから現れるか分からない。一瞬の気の緩みが、その後の調査全体の成否を分けるのです。

 仲間氏の顔写真や特徴を頭に叩き込み、四谷の街を行き交う人々の中から彼の姿を探します。

 張り込み開始から約30分後、ついに仲間氏が姿を現しました。徒歩で店の前に到着し、辻岡さんと一言二言交わして店内に入りました。

 宮本から「片岡さん、仲間氏は東側から徒歩で到着しました。交通手段は不明です」との連絡が入りました。

 私は辻岡さんにメッセージを送りました。「仲間氏を確認しました。移動手段を聞き出していただけますか」。すぐさま「了解です」と返事が来ました。

調査対象者の移動方法は?
ベテラン探偵たちの連携

 居酒屋での会食は、ビジネスの交渉の場としてはもちろん、互いの腹を探り合う、心理戦の舞台でもあります。辻岡さんが抱く不信感が、この会食でどのように解消されるのか、あるいは決定的なものとなるのか。我々はただ、彼らの動向を静かに見守るしかありません。そして、3時間が経過して、辻岡さんから「出ます」とメッセージが来ました。

 すぐさまインカムで宮本と田中に伝えました。しかしまだ移動手段が確定できていないため、私は田中に「バイクを押して移動できるようにして、仲間氏の動きに対応できるようにしてくれ」と伝えると、田中から「了解です」と返事がありました。