coco:月額3万円だと使用制限がなくて無限に使えるのと、GPT-5 Proという最新モデルで、普通のモデルではできない高度な分析もできます。例えば、ChatGPTには、「日本のピュアSaaSの平均EV/ARRは何倍ですか?」って聞いたりします。

記者:難しい言葉が続きますね。まず、「ピュアSaaS」ってどういう意味ですか?
coco:売上高の大半がクラウド上で提供されるサブスクリプション型サービスに依存している企業やビジネスモデルのことです。
記者:ではEV/ARRとは?
coco:EVがEnterprise Valueで企業価値、ARRがAnnual Recurring Revenueで年間経常収益のことです。つまり、年間の継続的なサブスク売上に対して、企業価値が何倍かを示していて、SaaS企業を評価する、目安の1つになります。
記者:それをどのように投資に生かすんですか?
coco:ChatGPTの答えだと、日本のSaaS企業の平均EV/ARRは約6倍でした(キャプチャ画像参照)。GVA TECH(298A)というリーガルテック企業のことを調べていたら、売上の半分がSaaSで、そのARRが約8億円とわかりました。時価総額は30億円ちょっとなので、EV/ARRを計算すると30÷8で4倍弱。平均より割安かもしれない、という一つの目安になります。
記者:なぜそんな難しい指標を使うんですか? PERとか、PSR(時価総額が売上高の何倍かで割安度を見る)では不十分なんですか?
coco:まずGVA TECHは赤字企業なのでPERが出せません。また、収益モデルが違う事業が混在しているのでPSRだと評価が難しい。継続性のあるSaaS部分だけを評価するために、この指標を使いました。
“EV/ARR”も“Rule of 40”も
ChatGPTが示す最新理論
記者:すごい・・・・・・普通の個人投資家にはなかなか真似できない分析だと思いますよ。なかなか「EV/ARR」という指標は思いつきません。
coco:いえ、じつはこの指標はChatGPTがヒントをくれたんです。SaaS企業のことをいろいろ聞いていたら、ChatGPT側から出してきました。ChatGPTはアメリカのファイナンス理論とか、英語の文献を学習しているので、自然と専門的な視点や用語も多く提案してくるんだと思います。Rule of 40(40%ルール)*とかも勝手に出してきますよ。海外の進んだ金融工学をChatGPTが取り込んで、日本に持ってきている感じです。
*40%ルール…SaaSビジネスの健全性を示す重要な指標。売上高成長率(%)+営業利益率(%)が40%以上なら健全とされる。
記者:日本人にはあまり知られていないけど、生成AIを使っている人は知っている、みたいな情報格差が生まれるんですね。これからはcocoさんみたいにAIを使いこなせる投資家がますます勝つ時代になりそうです。
coco:それは今後3~5年くらいまでの話だと思います。そのうちAIは、質問に答えるだけでなく、質問を考えてくれるようになる。そうなれば、全員が市場平均リターンしか出せなくなる時代が来るかもしれません。
記者:面白い視点ですね。そんな時代が来ると、いいような悪いような・・・・・・。ちなみに他の大学生もみんなChatGPTに課金しているんですか?
coco:みんな投資目的ではないけど。僕の周りでは2~3割が月額3000円のモデルを使っています。
記者:他にはどんな風にChatGPTを使うんでしょうか?
coco:ChatGPTは数値での定量的なスクリーニングは難しいので、定性的なスクリーニングに使いますね。例えば、「原発関連の中小型銘柄を教えて」みたいに聞きます。日本ギア工業(6356)は、それで見つけました。原発のある部品でシェア90%なのにPERが6倍くらいで、テーマ性で評価されるようになれば上がるかなと。
記者:ずいぶんChatGPTを使いこなしているけど、注意点とかはありますか?
coco:たまに間違えるので、鵜呑みにしないことです。特に数値は1ケタ間違えたり。百万円と十億円など単位を間違えることがあります。あと、ChatGPT側の規制があるので「この株は買いですか?」みたいな質問には答えてくれません。事業内容や業績といった客観的な事実を調べさせるのが適切な使い方です。
調べたい会社のKPI(重要業績評価指標)を四半期ごとにまとめさせたりもしますよ。ほらこうすると、どの要因でどれだけ伸びたかが一目でわかる。
記者:株式情報サイトよりも詳しいですね。でもやっぱり質問力が問われそう。
coco:ポータルサイトも、数年後にはChatGPTの影響で価値が薄れていく気はします。
記者:ChatGPT以外では、どうやって銘柄を見つけているんですか?
coco:銘柄探しの入り口は、基本的にはIRセミナーの動画です。IRに積極的な会社は株価も上がりやすいと思っています。
1時間くらいの動画を、GoogleのNotebook LMというAIに読み込ませて、まず要約させる。それで面白そうだと思った会社を、今度はChatGPTを使って深く分析する、という流れですね。
記者:複数の生成AIを使いこなしていますね。
coco:それぞれ得意領域があるので。GeminiはChatGPTと比較すると、推論や論理的思考は弱いし。Claudeは自然な日本語表現が得意です。
若手社長の小型成長株に注目
IRに電話もする“実践派”投資
記者:ところで、好きな株は?
coco:僕は小型成長株が好みです。とくに若い社長が好きで、20代で会社を上場させたANYCOLOR(5032)の田角陸社長とか、タイミー(215A)の小川嶺社長に注目しています。ただ、どちらも株価が割安ではないので、今は買えないです。
記者:Aiロボティクス(247A)には、投資しているんですよね。
coco:Aiロボティクスは上場の時から見ていました。龍川誠社長は、過去に事業売却を経験しているので、上場ゴールする可能性も低いだろうなと。第2四半期決算の後にIRに電話して、上方修正がほぼ確実に来るだろうと踏んで買いました。
記者:IRに電話で問い合わせまで。やっぱり実践派ですね。将来が楽しみですね。
coco:株の勉強会とかには、今まで以上に積極的に参加していきたいと思っています。
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本記事は2025年10月1日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。