
米シリコンバレーでよく言われるのは、ハードウエア事業は難しいということだ。 メタ・プラットフォームズ の場合、そのうえコストも膨れ上がっている。
フェイスブックやインスタグラムを傘下に持つ同社は、仮想現実(VR)ウエアラブル端末などを手がける「リアリティー・ラボ」部門で、過去4年間に累計680億ドル(約10兆円)を超える営業損失を出している。投資家に公表された数字だけでこの額になる。メタがハードウエア中心の事業の財務状況を開示し始めたのは2021年からで、VR機器メーカーのオキュラスの買収に20億ドルを投じた7年後のことだった。
同部門は小さなヒット商品をいくつか生み出したが、赤字を止められるほどではない。調査会社IDCによると、メタはスマートグラス「Ray-Ban(レイバン)」を過去4四半期に約280万台販売している。まずまずの数字だが、それでもIDCが推計する アップル のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の同期間の販売台数に比べると約1%に過ぎない。 メタが17日に発表した新たなスマートグラス も、この流れを変えるとは見られておらず、アナリストはリアリティー・ラボ部門の今年の営業損失を200億ドル近いと予想する。
だが、メタは長期戦を見込んで非常に野心的な目標を立てている。同社は明らかに、アップルの消費者向けデバイスにおける支配的地位は人工知能(AI)時代には脆弱(ぜいじゃく)だと考えている。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、人間の知能を超えるAIと定義される、高度なAI「スーパーインテリジェンス」を開発する構想において、スマートグラスが極めて重要だと考えている。