そこで、大量得点して勝つチームが、どうして優勝確率が高いのかを考えてみます。

序盤のビッグイニングが
投手陣にもたらす好循環

 まず破壊力がある打線なら、能力の高いバッターが多いということです。小技に頼らなくても相手を攻められます。非常に単純ですが、大量得点を奪うための最大の原動力になります。

 そして次に挙げられるのは、「疲弊度」を軽減できるという点でしょう。この点で一番の恩恵を受けるのが投手です。

 先発投手であれば、試合序盤に3点の援護があれば、ピッチングの内容を変えられます。援護がなければ「先取点を与えられない」と力が入るし、1点だけのリードでも「とにかく先頭打者を出さないようにしよう」という心理が働きます。

 しかし序盤に3点の援護をもらえば、「先頭打者だけ気をつけよう」「無駄な四球だけは出さないようにしよう」となるでしょう。

 それこそ5点差もあれば、もっと楽になります。大量リードされた相手打線は、どんどんストライクを先行させてくる投手に対し、仕掛けが早くなります。能力のある投手は特に球数が少なくなり、多少の能力が落ちる投手でも力まずに投げられます。

 一塁に走者がいても、得点差があれば盗塁を仕掛けにくくなります。大量点をリードされている状況での盗塁死は、絶対にやってはいけないアウトになるからです。

 投手はそれほど速いクイックモーションをやる必要もなく、けん制球の必要性も減り、自分のリズムで投げられます。

 能力のある投手であれば、力をセーブして疲労を少なくして完投します。継投に関しても疲れのたまったリリーフを休ませられます。

 登板した投手も緊迫した試合ではないため、疲労は軽減できるでしょう。疲弊しないで勝てるメリットは大きく、それが大勝する試合が多いチームが優勝する確率を上げている要因だと思います。

疲労軽減で投手陣を蘇らせた
伊藤智仁コーチの戦略

 実際、このパターンで連覇したのが2021年と2022年に優勝したヤクルトです。前年度は2年連続の最下位で、投手の再建が最大の課題でしたが、低い下馬評を覆しての連覇でした。