演奏には人間ならではの揺らぎがあり、まったく譜面通りということはないので、そういった意味でも楽譜が読めなくても演奏はできるという状況は、それほど不自然ではありません。
作曲家にとっても、今では自宅のパソコンやスマホで簡単に録音ができるため、自分のつくった楽曲を譜面に書き起こすよりも、デモ音源をつくるほうが一般的です。そして、これは伝える側にとってもそうですが、それを聴く側にとっても便利な状況になっています。
たとえば、あなたが歌手やレコード会社の社員だったとして、作曲家から「新曲をつくった」といわれてメロディが書かれた譜面だけを渡されても、それが良い曲なのかどうなのか判断するのは難しい、と想像できるのではないでしょうか。
現代では私たち作曲を仕事にするような人の多くは、ほとんど商品として世に出ている音源と変わらないようなレベルのデモテープを、「作曲」の段階でつくっています。最近、そして今後はさらにAIがその作業の補助をしてくれることでしょう。
学校の音楽の授業が面白くなくて
「音楽が苦手なんだ」と思い込んでいた
さて、私は前述の通り、特別な音楽教育を受けていません。「楽譜が読める」というのは、義務教育の音楽の範囲内でも十分に可能なので、じつはそれほど大したことでもないのですが、さすがに作曲や編曲といった作業となると、誰にも教わることなしにできるものなのか、と多くの人が疑問に思われるでしょう。
正直これに関しては、できる人はできるというしかありません。ある意味では音楽の才能というのは、こういったところで経験とは無関係に発露することがあります。
私はどちらかというと音楽の授業に苦手意識を持っていました。
テレビやラジオ、CDで聴くポップスは大好きで、家や車の中ではいつも歌っていましたし、小学校低学年の頃には自分で好きな曲を集めてテープをつくったり、あとは適当な曲を鼻歌でつくったりもしていました。







