音楽におけるAIの可能性と限界、そして創作の本質に迫る写真はイメージです Photo:PIXTA

AIは歌詞や編曲まで生み出せるほど進化し、すでに商業作品に活用できる水準にある。そう語るのは、FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」「NEW KAWAII」など多くの有名アイドルやシンガーに楽曲提供をしている作詞作曲家・ヤマモトショウだ。しかし、その一方で「AIでは超えられない領域がある」とも指摘する。音楽におけるAIの可能性と限界、そして創作の本質に迫る。※本稿は、ヤマモトショウ『歌う言葉 考える音――世界で一番かわいい哲学的音楽論』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。

“異様”なスピードで進化している
AIなら歌詞もメロディも作れてしまう

 ここ数年のAIの進化はかなり異様なものがあります。

 “異様”という表現をしたのはそれは私たちが、通常技術の「進化」のスピードとしてイメージするものとは大きくかけ離れているからです。

 おそらくこの文章を書いてから、これがみなさんの目に触れるまでの数カ月の間でも、もしかしたら音楽業界に想像を超えるような影響を与える大きな変化があるかもしれません。

 たとえば生成AIによって、今では人が読んでもほとんど違和感のないテキストを自動生成することができます。じつはここまでの文章をAIが書いていたとしても、2025年5月現在なら十分ありえることではないでしょうか。

 そして、「歌詞的なもの」をAIが生み出すこともそれほど難しいものではないでしょう。たとえば、ChatGPTなどに「青春をイメージした歌詞を書いて」と指示すれば、それなりに形になった歌詞を出してくれると思います。

 メロディなども作曲AIを用いれば、同様に生成することができます。

AIで商業作品を作れるけど
作曲においてはイマイチ

 もう少し踏み込んだ実感について話すと、音楽制作の要素として「作詞」「作曲」「編曲」「演奏」を考えたときに、すでに「作詞」「編曲」などは十分に、聴いて違和感のないレベルのものがAIによって生み出せると思います。場合によって商業作品でも使用可能でしょう。

 これは、編曲も作詞も基本的にメロディ(作曲)というベースから出発するものであり、ある程度の型が存在するものだからです。それに対してメロディそのものは、もう少し複雑な事情があるように思われます。