
日本の家計の金融資産(個人マネー)が過去最高を更新する中、“預貯金偏重”からの脱却が鮮明になっている。長らく個人マネーの過半を占めてきた「現金・預金」の比率が過去最低の50.3%まで低下し、50%割れが目前なのだ。一方で、残高増加の立役者となっているのが、投資信託や上場株式といった「リスク資産」だ。新NISAの効果もあり、「貯蓄から投資へ」の流れは、いよいよ本格的な転換期を迎えているのか!? 日本の個人マネーの動きを読み解いていく。
個人マネーは過去最高の2238兆円に!
「現金・預金」比率は50.3%で最低水準に
日本銀行が9月18日に2025年4-6月期の「資金循環統計」を公表しました。
これによると、2025年6月末時点の家計金融資産(個人マネー)の残高が、2238兆7250億円と前四半期比1.8%増加し、過去最高残高を更新。直前の2025年1-3月は株式相場が下落して家計金融資産残高も減少に転じていました。しかし、4月中旬以降に相場が大きく反発したことで、2024年12月末に記録した2232兆9820億円を上回っています。
下のグラフは、主要な金融商品の内訳を示したものです。
「現金・預金」の直近の比率は50.3%と、依然として過半を占めているものの、1997年以降の約20年の間で最も低く、いよいよ50%割れが迫っていることがわかります。現金・預金の残高は、足元の3年ほど横ばいとなっており、個人マネー全体が増加トレンドにある中で、その比率は徐々に低下している状況です。
個人マネー増加の牽引役は「リスク資産」
投資信託や株が過去最高を更新し国債も大幅伸長
一方で、残高の増加が目立つのが、「投資信託受益証券」(以下、投資信託)や「上場株式」といった「リスク資産」です。
投資信託は、2022年末時点では87兆円と100兆円に届いていませんでした。そこから、2023年末には107兆円、2024年末には136兆円と拡大し、2025年6月末で140兆円に達しています。また、上場株式も、2022年末が124兆円、2023年末に158兆円、2024年末に177兆円、2025年6月末に182兆円と増加が続いています。このことから、これらのリスク資産が、家計金融資産残高の拡大をけん引してきたことが分かります。
ちなみに、2025年の6カ月間での増加率を見ると、債務証券(国債、財投債)の増加率が12.6%とグラフに掲載した項目の中で最も大きな伸びとなっています。国債利回りが大きく上昇する中で、個人向け国債などに魅力を感じる個人投資家が増えていることがうかがえます。
新NISA効果か、投資信託が躍進!
投信比率は6.3%で過去のブーム時を上回る
もう少し、投資信託に焦点をあててみましょう。
家計金融資産における投資信託の残高と全体に占める投資信託の比率を見ると、最新の2025年6月末時点の投信比率は6.3%で、2024年12月末の6.1%を超えて過去最高を更新しています。2025年に入って、新NISA元年となった2024年の年11兆円の資金流入ペースからは減速していますが、それでも高水準の資金流入は継続しています。
資産形成や物価高対策としての投資信託の役割は拡大しているものと見られます。過去に投信ブームがあった2005-2007年も、2012-2014年も、投資信託比率5%には届いていませんでした。
投資信託が、個人マネーにおける存在感をますます高めていると言えそうです。

20年超にわたって投資信託動向を分析してきた藤原延介氏が、投資信託の最新動向やニュースを取り上げて、わかりやすく解説! 2024年から大幅拡大したNISAでは、投資信託での運用が不可欠に。でも「どうやって選べばいいの?」「組み合わせ方法は?」などわからない人も多いのでは? このコラムで投資信託の売れ筋やトレンドの変化をチェックすることで、投資信託の選び方や資産運用法などが見えてきます。
ダイヤモンド・ザイでは1年に1回、「NISAで買える本当にイイ投資信託」を部門別にランキングし、上位のファンドを表彰している。人気や知名度ではなく、データを最重視した完全実力主義のアワードだ。「1.どれだけ上がったか(上昇率)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの独自基準で評価を行う。また、非常に人気があり多くのお金を集めているにもかかわらず成績が振るわない投資信託も、「もっとがんばりま賞」として発表している。
<ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025>
[2025年]受賞投資信託30本一覧
▼日本株総合部門
▼日本中小型株部門
▼米国株部門
▼世界株部門
▼新興国株部門
▼リート部門
▼フレッシャー賞
▼もっとがんばりま賞
▼(番外編)インデックス型「最安ランキング」
▼当グランプリの「選定基準」はこちら⇒https://diamond.jp/articles/-/363017
本記事は2025年10月4日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。