「アクティブ投資信託はコストが高いからダメだ」という人たちが見逃していること

新NISAのスタート以来、オルカン、S&P500などのインデックス投資信託が大人気に。一方で、アクティブ投資信託に拒絶反応を示す人が多くなった。理由は“コストが高いから”。だが実は、誤解されている面も大きい。アクティブ投資信託は、本当に買う価値なしなのか。否定する前に、冷静に検証してみよう。(河野拓郎、ダイヤモンド・ザイ編集部)

投資信託の成績は“コスト差し引き済み”
高コストでも好成績なら買う価値がある

 投資信託には、「インデックス型」と「アクティブ型」がある。そのうちアクティブ型の投資信託に対しては、“買う価値なし”という声が多い。主な理由は“コスト(信託報酬)が高い”というものだ。

 だが、誤解されている面も大きい。冷静に、アクティブ投資信託のメリットとデメリットを理解したうえで判断すべきだ。

「アクティブ投資信託はコストが高いからダメだ」という人たちが見逃していることPhoto:bluet/PIXTA(ピクスタ)

 まず基本として、インデックス型とアクティブ型の違いを確認しておこう。インデックス投資信託は、「指数」(インデックス)に連動する成績を目指すもの。NISAで一番人気の投資信託「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(愛称「オルカン」)や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」などがこれだ。

 たとえばオルカンなら、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」という指数に連動するよう、運用されている。指数とは、市場全体あるいは一定のグループの値動きを示す数字だ。機械的な運用なので、コスト(信託報酬)が安く、成績は市場平均(指数)並みとなる。

 一方、アクティブ型は運用会社が独自に投資対象(銘柄)を選んで組み合わせる。調査などの手間がかかるため、インデックス投信よりコストが高くなるのだが、高コストというだけでアクティブ投資信託を全否定するのは乱暴すぎる。

 確かに、コストは成績に確実に影響する。しかし、投資信託の成績(騰落率)は、信託報酬などのコストを“差し引いたあと”の数字だ。つまり、多少コストが高くても、それを補って余りある好成績なら買う価値がある。

 アクティブ投資信託の多くは、高コストと引き換えに、指数を上回る成績を目標とする。指数に勝てないなら、インデックス投資信託を買ったほうがいい、ということになる(ただし、インデックス投資信託も信託報酬等が差し引かれる分、成績は指数を若干下回る)。では、指数を上回る成績のアクティブ投資信託は実際にあるのか。

 身近でわかりやすい日本株型の投資信託で見てみよう。日本株の代表的な指数であるTOPIXと、それを基準にしているインデックス投信、そしてアクティブ投資信託で、1年・3年・5年の成績を比較した。繰り返しになるがすべて、“高い”と言われる手数料、すなわち信託報酬を差し引いたうえでの成績比較だ。

 1年・3年・5年のすべての成績がTOPIXを上回るアクティブ投資信託は、5年以上の運用実績を持つ259本*のうち、70本あった。ちなみに、うち45本はさらに10年間の成績で見てもTOPIXを上回っている。その中で、NISAで買えるアクティブ投資信託の5年の上昇率トップ3が上の表だ。

*中小型株型を除く日本株全般に投資する投資信託。レバレッジ型など特殊な運用内容のもの、DC専用、ラップ専用等も除く。

 「ダイワ金融新時代ファンド」は銀行など金融関連に特化して投資する。「四季の便り」は高配当株にフォーカス。「初(はじめ)くん」は成長性を重視する運用方針だ。市場環境によりその時々で成績上位の顔ぶれは変わるが、“指数に勝ち続けている”投資信託は現実にあるのだ。

 半面、1年・3年・5年のすべてでTOPIXを下回るアクティブ投資信託も、259本中77本あった。これが、アクティブファンドが忌み嫌われる、もう一つの理由だろう。アクティブ投資信託の成績は、運用方針や運用を指揮するファンドマネージャーの腕次第。結果として、成績に大きな差が出る。当たり外れが大きいため、“いい投信”を見極めなければならない。今が好成績でも、市場環境の変化やファンドマネージャーの交代などで成績が急落し、そのまま低迷することも。購入後も、動向をウォッチし続ける必要がある。

 つまり、アクティブ投資信託の難点は“コストが高い”ことではなく、コストに見合った好成績の投信を“選ぶのが難しい”ことなのだ。言い換えると、しっかり選べば市場平均を大きく上回る利益を狙えることが、アクティブ投資信託の魅力だ。高コストという一点で全否定するのはもったいない。

 これに対してインデックス投資信託は、投資対象(連動する指数)が同じなら運用内容はほぼ同じ。成績に差をつけるのはコストなので、指数と信託報酬だけ見ればいい。投資初心者や手間をかけたくない人、あるいは平均並みの成績で満足という人は、インデックス投資信託だけでも十分だ。