世界の投資家が選ぶのはインドより中国?米国から欧州の流れは世界的な動きに【投資信託の最前線】

日本の投資信託市場では、少しずつではあるが米国株以外の欧州株やインド株型に資金がシフトしつつある。しかし、世界の投資家たちの間では、違った動きも見え始めている。世界の株式ETFの最新データを使い、世界の投資家が今、どこに注目しているのか、そして、日本は世界の潮流と比べてどう違うのかを解説する。

米国株への資金流入は2024年下期にピーク
2025年から欧州株への資金流入が目立つように

 2025年7月の「投資信託の最前線」では、「日本の投資信託市場において、米国株型への資金流入が急減速」する一方、「欧州株型やインド株型に資金シフトの兆しが見られる」ことを取り上げました。今回は、海外の動向を見る上で、世界の株式に投資する上場投資信託(ETF)の資金フローを確認していきたいと思います。

 世界の株式ETFの全体の資金フローと、国・地域別の割合を示したのが、次のグラフです。グラフは投資信託の評価機関モーニングスターのETFデータベースをもとに作成しました。株式ETFのデータは8月末時点で12.7兆ドルとなっており、おおよそETF市場全体のデータをカバーしていると考えられます。ただETFは、リアルタイムで取引できる利便性から、資金フローは相場動向の影響を受けやすく、短期的な資金流出入も反映する特性があります。そこで、トレンドを見やすい形にするため、2021年1月~2025年6月の期間における半年ごとの国・地域別の資金流出入を示しました。また、投資家の地域的な選好を確認するため、グローバル型のETFは除いて、国・地域ごとに資金フローを集計しました。

 これを見ると、2022年の世界的な株式相場の下落を受けて、資金フローが低迷、すなわち資金流入額が減少していることがわかります。2023年上期に底を打ち、2023年下期から資金流入が急回復。そして、2024年下期にピークをつけています。しかし2025年は、トランプ米大統領の政策をめぐる不透明感などから、4月初旬まで株式相場は下落したため、それに合わせて2025年上期の資金流入額も再び減速しています。

 ピークをつけた2024年下期の資金フローを国・地域別に見ると、北米型(ほぼ米国型と言えます)に資金流入が集中していました。しかし、その後の、2025年上期の資金フローを見ると、全体の資金流入額が減速する中で欧州先進国型のETFに高水準の資金流入が見られています

 日本の投資信託の資金フローでも欧州株に資金流入の兆しは見られているものの、米国株との比較でみればまだまだその資金流入額は限定的です。しかし世界的に見れば、米国からの資金シフト先としては、やはり欧州の存在感が大きいと言えるでしょう。

日本で人気のインド株の存在感はETFの世界では限定的
グローバルな視点から投資戦略を考えよう

 なお、日本の投資信託市場で米国株型の次に残高の大きいのは、インド株型です。しかし、世界の株式ETFの資金フローでみれば、インド株ETFの資金流入額は極めて限定的です。

 その一方で、一定の存在感を示しているのが中華圏の株式ETFです。2024年来、中国株のパフォーマンスが回復傾向にある中、世界の投資家が中国株に注目しています。ちなみに、日本株のETFも2023年上期から2024年上期にかけては、半年で100億ドル前後の資金流入が見られましたが、この1年ほどは日本株ETFへの資金フローはほぼ止まっています。

 このように、世界の投資家の資金フローを見ると、日本の投資信託の動向と類似している部分もあれば、違っている部分もあります。日本の投資信託市場では、なかなか人気が出ない欧州株型、極めて人気が高いインド株型など、世界の投資家の動向と比較しながら投資戦略を考えてみるのも一案と言えそうです。

藤原延介さん藤原延介(ふじわら・のぶゆき)●1998年三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパンを経て、2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社。マーケティング部 部長。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど、約25年に渡り資産運用や投資信託に関するリサーチや投資啓蒙に従事。慶応大学経済学部卒。
◆投資信託の最前線
20年超にわたって投資信託動向を分析してきた藤原延介氏が、投資信託の最新動向やニュースを取り上げて、わかりやすく解説! 2024年から大幅拡大したNISAでは、投資信託での運用が不可欠に。でも「どうやって選べばいいの?」「組み合わせ方法は?」などわからない人も多いのでは? このコラムで投資信託の売れ筋やトレンドの変化をチェックすることで、投資信託の選び方や資産運用法などが見えてきます。
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