認知障害や記憶障害を専門とする医師・山鳥重氏は、この「過去の記憶との一致」を認識できない脳障害患者を紹介しています。その患者は、見ている物を正確にスケッチすることはできるのですが、描いた物がなんであるかを理解できないのだそうです。その人は、過去の記憶との一致を確認できないので「分かる」ことができないのです。
つまり「分かりやすい」とは、外界からの情報が「脳内関所での審査が楽で、脳内辞書内の一致する項目を見つけやすい」ということです。
したがって、分かりやすい文章を書くには、脳内関所の内部で、どのように辞書引きの作業をしているのかを知っておくことが大切です。
それでは、脳内関所での実際の作業を見ていきましょう。
脳内関所の作業は
脳内辞書選びから始まる
脳内関所での作業項目を大きくまとめれば、次の5段階になるでしょう。
作業(1)脳内辞書を1冊選ぶ
作業(2)情報を分解する
作業(3)情報を整理する
作業(4)情報の意味を決定する
作業(5)情報の論理性をチェックする
5段階の作業を詳しく見てみましょう。
作業(1)脳内辞書を1冊選ぶ
入ってくる情報に応じて、たくさんある脳内辞書の中から該当項目がありそうな1冊を選ぶ作業です。たとえば日本史の情報が入ってきたら、運転技術の辞書ではなく、日本史情報の辞書を選びます。
すぐには辞書を決定できず、作業(2)「情報を分解する」や(3)「情報を整理する」を繰り返しながら決める場合もあります。しかし、いったん辞書が決まれば、同じテーマの情報が流れてくる間は、この作業(1)は省略されます。
メールの題(Subject)や本や新聞の見出しは、この最初に行う「どの辞書を選ぶのか」という脳内関所の作業を助けているのです。逆に言うと、分かりにくい文章は、脳内関所が辞書を決定できないまま作業(2)や(3)をさせられるので、混乱するのです。
作業(2)情報を分解する
情報の分解作業です。小さくて狭い脳内関所で処理しきれないような大きなサイズの情報は、処理できるように適当な大きさの「ひとかたまり」に分解します。
たとえば「5484965734」という10桁の数字は、脳内関所のサイズぎりぎりなので扱いにくく感じます。しかし電話番号のように「548-496-5734」とハイフン(-)でかたまりのサイズを小さくしてやると、脳内関所は扱いやすくなります。







