小さな積立投資では意味がない

 まず強調したいのは、60歳からの資産運用は「額」がものを言うという点です。

 20代や30代であれば、毎月1万円の積立でも時間を味方に数十年で大きな成果を得られます。

 例えば30年で360万円を積み立て、年利5%で運用できれば、資産は820万円にまで膨らむ計算です。40年かければ、1000万円以上の成果も期待できます。若さの最大の武器は「時間」なのです。

 ところが60歳から同じように月1万円を積み立てても、10年後に得られるのはせいぜい155万円程度にすぎません。

 生活費に換算すれば3~4カ月程度の額で、到底「資産運用」とは呼べないでしょう。だからこそ、ある程度まとまった金額を最初から投じることが必要になります。

 目安としては500万円です。この金額を年利5%で10年間運用すれば、最終的に1152万円まで増える可能性がある。ここで初めて、老後の生活を下支えする成果が見込めるのです。

投資先の王道は?

 次に大切なのは、投資先をどう選ぶかという点です。

 結論を急げば、私は60歳から投資を始める方に「全世界株式インデックスファンド」を勧めています。オールカントリー、いわゆる「オルカン」などと称されるものです。

 名前は難しく聞こえるかもしれませんが、要は世界中の上場企業に自動的に分散投資できる投資信託です。

 なぜこれが最適なのか。

 個別株を買おうとすれば企業の業績を調べ続ける必要がありますし、テーマ型ファンドやアクティブファンドは一時の流行に左右されやすい。外貨や保険商品も仕組みが複雑で、リスクとコストの割に成果が乏しい場合が多い。FXや暗号資産は言うまでもなく、短期の値動きに翻弄されて資産を減らす人が後を絶ちません。

 その点、全世界株式インデックスファンドは、世界経済そのものの成長を取り込む形で投資できます。

 1960年からの長期データを振り返れば、確かに一時的な暴落は何度もありました。リーマンショックもコロナショックも例外ではありません。

 しかし、そのたびに回復し、長期で見れば右肩上がりの成長を続けている。私たちが「世界経済の成長は続く」と信じられる限り、この投資先は極めて合理的だと言えるのです。