特に、干潮時の磯の沖や、港の先の方で素潜りを行うと、岸壁採集や磯採集では採れない生物を採集できる。相手は海の生物なのだから、潮が引いたときに取り残されでもしない限り、沖の方へ移動する(もしくは、そもそも干潮でもぎりぎり海の中に水没している場所に棲息する)。その逃げてきた生物を、干潮の波打ち際あたりで採集してしまおうという魂胆だ。

 あと、マニアックな話をすると、日本海ではこの方法が主流。というのも、日本海は潮の満ち引きの差が小さすぎて、大潮の日の干潮でも磯がほとんど出てこないからだ。

海底の生物たちは
スキューバと潜水艇で採集

(6)スキューバダイビング
 採集対象:ナマコ、サンゴなど、海底に棲む生物たち

 素潜りでは、さすがに行ける水深に限界がある上、息が続く限りしか採集できない。しかし、海底の生物をもっと落ち着いて採集したい。その執念で、水族館スタッフは、スキューバダイビングでの採集を行うに至る。空気の入ったボンベと、それを吸うための器具、そして採集機材を持って、最大で水深40メートルぐらいまで潜る。

 筆者もダイビング採集をするから分かるのだが、水深20メートル辺りを超えると、海の青の色も変わって、もはや異世界なんだよね。当然棲んでいる生物もがらりと変わる。素潜りでは到底アクセスできない、そんな水深の生物は、展示生物として実に魅力的だ。

 当然、スキューバダイビングはライセンスもいるし、場所によっては潜水士免許、そして密漁を防ぐため、都道府県による「特別採捕許可」なんてものがいることもある。もちろん、良いポイントに行くには水族館自身がボートを持つか、ダイビングショップに依頼する必要も出てくる。よって、素潜りより格段に大掛かりな方法なんだよね。

(7)潜水艇
 採集対象:深海生物たち

 ほんの一部ではあるが、無人潜水艇(ROV)、もしくは水中ドローンを使っている水族館もある。船の上から沈めて、モニターを見つつリモコンで操縦しながら、深海の生物を採集していく。

 ロボットアームと吸引装置を使って優しく採集できるので、漁による混獲より生物が傷つかないのだ。特に、深海に棲むイソギンチャクやクラゲ類には実に効果的な方法だ。