では早速、答え合わせ。

 1種に見えた方:才能ナシ。
 2種に見えた方:凡人。
 3種に見えた方:才能アリ!
 (4種以上に見えた方も、才能ナシ……)

 ……どっかの俳句の査定番組みたいになってきたね(笑)。そう、ここには3種のイソギンチャクが混ざっている。詳細については後述の筆者の研究例に記すが、特に1種目と2種目は「8枚の花びら状のひらひらした部分の大きさの比率が、みんな同じか、それとも大小が交互に並ぶか」という、「誰が分かるんだよ!」というような特徴で見分けられる。

 ちなみに、泉のような分類学者は、長年の勘により、こういった違いを“雰囲気”で見破れるような能力を持つ。これを、“神の眼”と呼ぶので覚えておいてほしい(こんな呼び方をしているのは世界で筆者だけだが)。

水族館は未知の生物の宝庫
激レア生物が隠れていることも

 ところが、実は水族館のスタッフさんも、熟達した方はこういう“違和感レベルの違い”を見分けられるのである。そりゃ、飼育しながら日々死ぬほど生き物を見ているんだ。学者同様、長年の経験で勘が養われるんだよね。おまけに、生き物が日々大量に搬入される水族館だから、そういう違和感のある生き物が搬入されてくる機会も多いのだ!

 中には、新種だとか、100年に1匹のような激レア生物であることもある。学者が喉から手が出るほど欲しい生物が、予備水槽に無造作に投げ込まれていることもある。

 しかし、水族館のスタッフさんの本業はあくまで飼育・繁殖などの業務。だから、研究者のように日々研究論文を読み漁ったり、DNAの分析をしたりはできないのだ。というのも、次のコラムで解説するように、「研究者」とは基本的に博士号を持ち、学術論文を書けるような人を指すのだが、博士号を取得してから水族館に勤める人はほとんどいないからだ。(注1)

 それはつまり、「水族館の中で、宝石よりも貴重な生物が学者に気づかれないまま飼育されてきた(可能性がある)」ということ!言っちゃ悪いが、これはマジでもったいないことこの上ない。

(注1)念のため断っておくと、あくまで水族館での研究があまり進んでこなかったのは、専門家の学者のような研究設備を持っていなかったからだからね。実際、専門家の私から見ても、神がかった知識と技術を持っているスゴい人たちだから、お間違いのないように。