「4科バランス信仰」が子どもをつぶす

 せっかく子どもにそれぞれ得意なものがあるのに、4科目総合での順位や偏差値を気にしすぎて、◯◯の教科が足を引っ張っている、と凸凹の凹の部分ばかりを言い立てるあまり、子どもが自信をなくしてしまったり、勉強が嫌になってしまったりして、結果、子どもを「つぶしている」保護者がいるのは大変残念なことです。

 私が提案したいのは、苦手科目を底上げすることでアベレージの向上を狙うのではなく、まずは得意なものをただひたすら伸ばすという方向性です。

 保護者が偏差値を気にするのは受験の終盤でいいのです。4科目以外でもいいのです。英語が得意なら、英検準2級合格を小学校で目指して、特に中学受験はしないという考え方もあります。

 どの塾の先生も、できるものを伸ばして自己肯定感を持たせたいと思っているはずです。しかし、保護者が4科目の順位と偏差値に固執してしまうケースが多いように見受けられます。

 ある実例をお話しましょう。算数が突出して得意で、偏差値で言えば70台、国語がすごく苦手で平均以下という生徒がいました。その子の取った戦略はこうでした。

 まずは算数を伸ばせるだけ最大限に伸ばす。算数と関連する部分もある理科はある程度まで伸びる。社会も理科ほどではないけれど、ある程度までは伸びる。その状態で、逆算して、苦手の国語で最低どのくらいまでできればいいのかを決め、そこに至るまでの最短コースを見つける――。結局その子は無事、4科目最難関校の開成に合格しました。

「苦手は克服できる」という幻想

 とはいえ、実際に4教科ある入試なのだから、「苦手科目はどうすればいいのか」という質問をよく受けます。これについて、本当に苦手な科目を普通程度に持ち上げる、ましてや得意科目にするというのは、そんなに簡単なことではないと私は考えています。

「まだ頭の柔らかい子どものうちであれば、苦手科目を克服できる」「子どものうちにやっておけば苦手でなくなる」と考える人は多いのですが、むしろ、子どもの食べ物の好き嫌いが生理的なものであるように、子どもだからこそ苦手なものはなかなか好きになりにくく、たいていは嫌いなままで、決して得意科目になどならないのが普通です。

 ですから、苦手科目に関しては、克服の目標数値を下げるべきだと考えています。苦手科目が10段階で2くらいの水準だとしたら、平均の5まで引き上げたいという気持ちを抑えて、3程度でよいと割り切るのです。

 そして、勉強の時間配分で言えば、得意科目8(できれば9)、苦手科目2(できれば1)くらいに「振り切って」いいと思います。苦手科目はやればやるほど能率が下がり、勉強が嫌いになるリスクが高いからです。