
「地頭が悪いから伸びない」――本当にそうだろうか。計算が遅くても算数が得意な子、国語が苦手でも暗記力に秀でる子はいる。見方を変えれば、子どもの可能性はまだまだ広がる。大切なのは「不得意をなくす」より「得意を伸ばす」という発想である。中学受験を考える保護者にこそ知ってほしい、子どもをつぶさない学びの向き合い方を探る連載第26回。(進学塾VAMOS代表 富永雄輔、構成/ライター 奥田由意)
「地頭の限界」は本当にあるのか
「地頭」という言葉が最近やたらと聞かれるようになりました。これはセンスや才能という言葉と同義だと思いますが、中学受験において、その意味での「地頭」の要素が必要であることは否定しません。
しかし、私が違和感を感じるのは、全員があたかも先天的に「地頭力がこれだけある」と、数値を振り分けられていて、それ以上に伸びることはないかのように考えられているふしがあることです。
私は断じてそんなことはないと思います。育て方によって、伸ばせる「地頭力」のようなものがあるのではないでしょうか。
そもそも、一言で地頭と言っても、その内実はさまざまです。たとえば、文系の地頭力と理系の地頭力があるでしょうし、理系でも数学的なセンスと図形のセンスは違います。
文系では暗記の地頭力もあれば、文章読解をする地頭力もあるでしょう。このように、かなりいろいろな要素に分解できると思うのです。
残念なのは、教育熱心な保護者ほど、特定のわかりやすい能力がないことを「地頭が悪いからだめなんだ」という言い方で片付けてしまい、今以上にその子が何らかの能力を伸ばすことは無理だと諦めてしまうことです。