特に問題は、京都駅から嵐山へのメインルートであるJR嵯峨野線だ。実はこの路線、京都駅周辺で単線になる区間があり、出発と終着が同時に行えない構造を抱える。しかも京都駅の配線上、同じ線路を関空特急も通る(滋賀県内発着の一部列車を除く)。そのため1時間あたりの普通列車の数は多くても5本しかない。
そして車両は、新快速電車やみやこ路快速で使われる「転換クロスシート」だ。この座席は、東京では「京王ライナー」や「TJライナー」と同様の座席で、座れれば快適だが、立つとなると空きスペースは狭く混雑しやすい。これらの悪条件が重なり、観光客で終日ごった返す状況が続いている。
先述した関空特急の発着駅を京都駅から山科駅に変更するなどの対策は進んでいるものの、抜本的な工事としては京都駅の重層化による線路分離、配線改良なども検討する必要があるだろう。
特に一部車両については製造から30年以上経過しており、
また、関空からのアクセスは、なにわ筋線や阪急新大阪連絡線などのプロジェクトが進行している。そのため敦賀駅(福井県)からサンダーバード号の関空延伸、フリーゲージトレインを利用した阪急京都河原町駅から南海を経由しての関空への直通特急運行なども検討してほしいところだ(技術上難しい点はあるが)。その他、検討されていたものも含めて改良可能な点はいくつもある。
・今出川通などで次世代型路面電車(LRT:Light Rail Tram)の整備
・京福電鉄北野線の複線化
・(一部市民から意見のある)連接バスの導入
・専用バスレーンの新設
京都市の財政状況は厳しく、道路拡幅も難しいなどの条件もあり簡単に進める施策は多くはない。ただ、新規路線開業は2008年の地下鉄東西線延伸までさかのぼり、以降は市バスの減便などむしろ混雑悪化につながった施策が目立つ。地元住民はこの点に憤慨している。
増額が決まった宿泊税などを活用し、交通インフラ整備に力を入れるべきだ。それこそ、観光で生まれた利益を市民へ還元することになるだろう。そして何より、国家戦略として観光立国を目指すなら、京都だけが犠牲のようになるのも問題だ。自治体レベルを超えて、国家レベルの対策や支援も必要ではないだろうか。
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