「板垣さんは、ある種の運命を背負って見える俳優」

『ばけばけ』のチーフディレクター村橋直樹は板垣さんの俳優としての魅力をこう語る。

「板垣さんは、ある種の運命を背負って見える俳優で、彼のそのいいところをそのまま撮りたいと思っています」(村橋)

「三之丞は、大きな時代のうねりの中でのどうしようもなさ、みたいなものと一人で戦わなくてはならない立場です。世界を変えようというような大きい戦いではなく、雨清水家のなかで小さな戦いを強いられて立ち尽くす人物であることを板垣さんは表現してくれました」(同上)

 ところで、三之丞が初登場したときトキを「僕が嫁にもらってあげようか」「冗談、冗談」とからかっていたが、彼女が姉だと知る前は彼女に対してどんな気持ちで演じていたのだろうか。

「あれはもう本当に冗談のつもりでした(笑)。初登場では軽さを見せておいて、3週目の意外な展開になる。そのコントラストを作りたかったので、なんの裏心もなく軽く言っちゃってました(笑)」

 父を亡くした三之丞、今後はどうなっていくのだろうか。

「とにかく必死に強くあろうとしていきます。何もできないなりに、タエとふたり歩んでいく、三之丞の強くあろうとする様や健気さみたいなものは、松野家のユーモアとは少し毛色の違うものです。

 松野家と雨清水家のコントラストが今後より一層はっきりしてきます。あの家柄の環境で育ってきた三之丞とタエが、彼らなりに状況を受容するのか手放すのか、どこに向かうのか楽しみにしてください」

 最後に『ばけばけ』の魅力は?

「ふじきみつ彦さんの脚本が、楽しいことや悲しいこと、いろいろな出来事があるなかで、全部、包んでくれる温かさを感じていて、それがこのドラマの最大の魅力かなと思います。その温かさが、いまから会社や学校、どこかしんどいところに向かう人達を包んでくれるところが僕は好きです」

【プロフィール】
いたがき・りひと
2002年生まれ。2012年に俳優デビュー。24年、映画『八犬伝』『はたらく細胞』『陰陽師0』で第48回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞、25年『秘密~THE TOP SECRET~』(カンテレ・フジテレビ系)でドラマゴールデン帯連続ドラマで初主演を務めた。そのほかの出演作に、映画『ババンババンバンバンパイア』、ドラマ『しあわせな結婚』、映画『ミーツ・ザ・ワールド』、映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』など。俳優業のかたわら、アートの分野でも個展を開催したり、初めてとなる絵本を『ボクのいろ』を出版したりと多彩に活動している。