
NHKの連続テレビ小説『ばけばけ』は、作家・小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)の妻・セツが主人公のモデル。キャッチコピーは「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」。今回の朝ドラが期待できる3つの理由を紹介したい。(フリーライター 鎌田和歌)
「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」
小泉八雲を支えた妻が主人公
『ばけばけ』の舞台は明治時代の島根県松江市。
作家の小泉八雲はこの地で英語教師を務めながら『怪談』を執筆した。有名な「耳なし芳一」は八雲がこの中に収めたことで広く知られるようになった怪談である。
八雲は住み込み女中だったセツと結婚して三男一女をもうけ、54歳で亡くなるまで仲睦まじく暮らしたと伝えられている。
そのセツは苦労人で、没落した士族の家に生まれ、18歳で婿養子を迎えるも夫は貧しさに耐えられず出奔。その後、22歳で八雲と結婚する。八雲の日本語での執筆を支えたのはセツだと言われる。
ここまでが基本的な史実だ。
『ばけばけ』はセツをモデルにした松野トキが主人公で、実家の困窮に苦しむ小学生時代から物語が始まる。キャッチコピーの「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」の「うらめしい」はまず、彼女の生まれ育った境遇を示しているのだろう。
小泉八雲は今も愛される物語の紡ぎ手であり、その妻が主人公というのは、好評だった『あんぱん』や、15年たっても記憶に残る『ゲゲゲの女房』を思い出させる。今回もまた、お馴染みの作品にちなんだ仕掛けがドラマの中で展開されるはずである。
前置きが長くなったが、筆者は『ばけばけ』に大きな期待をしている者の一人である。なぜ期待できるのか、その理由を大きく3つに分けて紹介したい。