次第に疎外感や引け目を
感じるように

 他にも、Hさんと2人で話していると、同じ部署の一部のメンバーでつくっているSNSコミュニティグループ(矢野さんは入っていない)の投稿を見せてきたことがあります。それは、インフルエンサーを目指す女性社員中心のコミュニティグループで、バーベキューや飲み会などを楽しんでいる動画や写真がアップされていました。

 Hさんは、「この企画の幹事は私がしたんだけど、みんなが喜んでくれて!」と楽しそうに矢野さんに説明してくれました。

 しかし、次に彼女は、「言いにくいけど、みんな矢野さんを誘いにくいし、幹事とかも矢野さんにお願いするのは気を遣うみたい。だから今後は私が全部やるから安心してね」と、さらりとキツイことを言ってきたのです。

 矢野さんは、自分が仲間外れになっているのかもしれないと感じたのですが、企画営業部になじんでいるHさんのほうが本配属されるに相応しい理由をつきつけられているようでした。このときは、Hさんの言葉に胸が苦しくなったそうです。

 矢野さんは、マーケティングの知識などは自分のほうがあると思っていたものの、次第にHさんに引け目を感じるようになっていきました。同時に、上司も他のメンバーも、「みんな自分よりHさんのほうに企画営業部に残ってほしいと思っているんだろうな……」などと考えを巡らせては、落ち込むようになっていたそうです。

 それでも彼女は、自分のやりたいと思っていたマーケティングのスキルを身に付けるには、企画営業部で経験を積むことが最善だと思っていました。本配属に関しては、あきらめられずにいたのです。

 仮配属の新人に対しては、仮配属期間終了の1カ月ほど前に、人事担当者に希望部署などについてヒアリングされる面談の場が設けられます。矢野さんはいろいろと考えた結果、やはりマーケティングスキルを使う企画営業部に残りたいと思い、面談ではその旨を人事担当者に伝えました。

 そのとき担当者は、希望はわかったと言ってくれたのですが、そのうえで、「他に挑戦してみたいと思う部署はないですか」とも聞いてきました。矢野さんはその質問を、自分には企画営業部に残る適性がない、あるいは自分は企画営業部にはいらない人材だという意味に受け取ったようで、大変なショックを受けたそうです。

 筆者が最初に矢野さんの話を聴いたとき、彼女は「企画営業部に本配属を希望しているけれど、自分はいつもみんなから必要とされていない人間で、仮配属終了後は失職するかもしれない」とまで悩んでいました。