他人を陥れようとする同僚に振り回されないために
知っておきたい「認知のパターン」2つ
ここで、矢野さんの心理的な背景について考察したいと思います。
彼女は、「結論の飛躍(失職するかもしれない)」や「過度の一般化(いつもみんな)」が、認知(ものごとの捉え方)のパターンになっていました。
「結論の飛躍」は、根拠がないにもかかわらず、自分にとって不利で悲観的な結論を導き出すことです。たとえば、上司からメール返信がないことを、使えない部下へのメール返信は時間の無駄だと思っているのだろうと捉えてしまうようなことです。
「過度の一般化」は、ひとつの事例や根拠をもとに一般化した結論を他のすべてに対して下すことです。たとえば、仲良くなりたい人に話しかけたがそっけなかったことを、世の中に自分と親しくなりたいと思う人などいないのだろうとまで捉えてしまうことです。
認知のパターンには、適応的な認知(ものごとを客観的事実に沿って判断する)と非適応的な認知(根拠のない憶測を根拠にして、ものごとを判断する)があります。矢野さんの「結論の飛躍」も「過度の一般化」も、双方とも非適応的な認知となります。
過度の一般化の認知パターンには、「みんな」「いつだって」「絶対に」などの代表的なキーワードがあります。矢野さんも、Hさんや人事担当者の言葉を根拠に、「私は、“いつも”“みんな”から必要とされない」という一般化された結論を導き出していました。
しかし、それは単なる憶測に過ぎません。そういったキーワードが思い浮かぶ人は、それは具体的に何を指すのか、客観性があるのか、ひと呼吸置いて考えてみることが必要です。
「いつもみんなから必要とされない」
自尊心の低さを助長するNGワードは?
以上は、矢野さんの心理的な背景ですが、気をつけないといけないのは、過度の一般化を悪用して人を陥れたり傷つけたりしようとする人です。Hさんが、矢野さんの認知の特徴を意識していたかどうかはわかりません。しかし、「みんな矢野さんを誘いにくい」という言葉は、意識的あるいは無意識的に、過度の一般化を悪用していた可能性があります。
言われた矢野さんは「みんな」という言葉に反応し、ますます自分は誘われにくい人間だと思ってしまい、自尊心が低下してしまいました。
こういうことを言われたら、全員が誘いにくいというのは非現実的であることを、まず念頭に置くべきです。できれば、具体的に誰が誘いにくいと言っているのか、きちんと確認すると良いでしょう。Hさんのような人が職場にいたら、自分がその人の言動に惑わされないように、自分自身の認知を修正することが必要です。







