話を戻す際に、今まで相手がしていた話と本筋との関係性をひとこと添えることで、「議論の全体像から見て、あなたのお話は大きく離れていませんよ」という印象を与えることができるからです。

 このように相手の心証を良くしてから、「あなたの意見を踏まえつつ、ここからは本筋の話をしますよ」とガイドしていけば、相手は「自分の意見が尊重された上で、話が前に進んでいる」と感じてくれるでしょう。

事例で学ぶ!
本筋に戻すときのコツ

感じのいい人が「話がどんどんズレていく人」を一発で軌道修正する“魔法の一言”とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

 この考え方を紹介する際に私は、「地図」に例えることが多いです。

 イメージを持っていただくために、実際の地名・場所を例にとって、話の戻し方をご紹介します。

 まず、話の最初に範囲(スコープ)を決めます。

「今日は、東京都新宿区の話です」

 という具合です。

 相手から、その範囲外の話が出てきたときには、

「それは、渋谷区のお話ですね。大規模な商業施設も多く、類似する点も多いので、参考になる点がたくさんあります。ありがとうございます」

「それは、多摩エリアのお話ですね。東京都ではありますが、新宿区からはやや距離があり、経済面などで一緒に語るのは難しいところがあります。ただ、新宿を起点に考える際に、公共交通網で直接つながっていますので、考慮すべきポイントとして、記録させていただきます」

「なるほど、ニューヨークのお話ですね。世界経済の中心拠点と言うことで、学ぶべき点は多くあると思います。参考にさせていただきます」

 というふうに、どういう関係性の話であると捉えているのかに言及し、どういう共通項があるのかを明確にした上で、本筋である新宿区の話に引き戻すのです。

「それは、渋谷の話なので対象外です」とか、「多摩は関係ありません」とかいう言い方をすると、相手は気分を害してしまい、議論に参加しなくなったり、内容にかかわらず反対の立場をとったりすることにつながりかねません。