
今年6月、時計大手のカシオ計算機で2代連続となる「非創業家社長」が誕生した。新政権では創業家の影響力が薄まったようにも見えるが、カシオは時計大手の中で“独り負け”状態にあり、業績の「V字回復プラン」達成は困難を極めている。今年7月にはアクティビストがカシオ株を大量保有していることが明らかになり、改革は待ったなしの状況だ。カシオ新政権への創業家の影響力を解明するとともに、苦境を脱却するための課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
2代連続で「非創業家社長」のカシオ
増田前社長の改革継承に期待がかかるが…
時計大手のカシオ計算機の新政権が、船出早々、苦難に直面している。
カシオでは今年6月、同社初の“非創業家社長”だった増田裕一氏が就任からわずか2年で退任し、最高財務責任者(CFO)だった高野晋氏が新社長に就いた(カシオの社長交代劇については、『カシオ“非創業家社長”電撃退任の裏事情、社内でささやかれる「樫尾家の院政復活説」の中身』参照)。社長交代と同時に、代表取締役会長だった創業家の樫尾和宏氏は、代表権のない取締役会長となった。
増田前社長は、在任中に600人を超えるリストラや収益性の低い事業からの撤退など、構造改革を推し進めた。高野新政権には、その路線の継承が期待されるところだ。カシオは次ページで述べるように、セイコーグループやシチズンといった他の時計大手に後れを取っており、“独り負け”の状態にある。25年度は“V字回復プラン”を描いているが、トランプ関税の影響で、出だしからつまずいてしまった。
しかもここにきて、カシオにはアクティビストの影が忍び寄る。今年7月、オアシス・マネジメントがカシオの株式を5%超保有していることが明らかとなり、社内には激震が走っているのだ。
数々の困難に直面するなか、新政権に創業家の影響力がどのくらい残っているのかも気になるところだ。非創業家社長が2代続くカシオでは、樫尾家はどの程度経営に関与しているのだろうか。
次ページでは、カシオ新体制への創業家の影響力を解明するとともに、時計業界“独り負け”を脱却するための課題を明らかにする。