国内時計“御三家”のセイコーグループ、シチズン時計、カシオ計算機の3社の中で、カシオが独り負けに陥っている。2024年3月期決算で唯一減益となった上、500人のリストラを発表したのだ。カシオは時計以外の事業が育たず退却戦が続いており、「成長事業ゼロ」という空前の危機に瀕している。カシオの独り負けの真因に迫るとともに、不振のカシオに差し込む“一筋の光明”を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
リストラ続きのカシオにようやく差した
“一筋の光明”の正体とは
「またリストラか。人員削減の発表に慣れてきてしまった」
カシオのベテラン社員は皮肉交じりにこう話す。カシオは今年5月、全従業員の約5%に当たる500人の人員最適化を発表した。これ以降、カシオはリストラの詳細を公式には発表しておらず、6月27日に開催された株主総会の資料(電子提供措置事項)でも5月の公表内容の掲載にとどまっているが、早期退職を募集するとみられる。
カシオがリストラに踏み切った要因は業績不振にある。詳細は次ページで述べるが、国内時計大手の中で、カシオだけが減益となっており“独り負け”状態にあるのだ。
これまでもカシオは「将来の持続的成長のため」などとして、業績悪化時にたびたびリストラを実施してきた。前述のベテラン社員がリストラ発表に慣れてしまうのも無理はない。それでも時計に次ぐ柱が育たず、「持続的成長」のきっかけをつかめずにいる(カシオの事業構造については、ダイヤモンド・オンラインの特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』の#6『G-SHOCK一本足のカシオに広がる焦燥、事業撤退ラッシュで「第2の稼ぎ頭」は育つのか』参照)。
カシオは不振から抜け出し、成長軌道に乗ることができるのか。次ページでは、カシオが時計業界で独り負けに陥っている真因に迫るとともに、不振のカシオに差し込む“一筋の光明”を明らかにする。