
時計大手のカシオ計算機で社長交代が正式発表された。カシオ初の「非創業家社長」はわずか2年で退任となる。創業家が“院政”を敷くことはあるのだろうか。カシオ社長の電撃交代劇の裏事情を探るとともに、新政権に及ぼす創業家の影響力を徹底分析する。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
「非創業家」の増田社長は志半ばで退任
樫尾和宏会長は続投
時計大手のカシオ計算機で社長交代が正式発表された。増田裕一社長は顧問となり、次期社長には取締役常務執行役員CFOの高野晋氏が就任する。代表取締役会長で創業家出身の樫尾和宏氏は取締役会長として続投する見込みだ。いずれも6月の株主総会で正式決定する。
カシオは設立以来、創業家である樫尾家の人物が代々社長を務めてきた。2023年に就任した増田氏は、初の「非創業家」出身の社長として注目を浴びた(増田社長については、ダイヤモンド・オンラインの特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』の#1『カシオ初の「非創業家」社長が抜てきされた裏側、樫尾家の返り咲きはあるか』参照)。
増田社長は昨年度に600人を超える人員削減に踏み切ったほか、電子辞書の新規開発中止や人事システム子会社の売却を決定するなど構造改革を推し進めてきたが、わずか2年での交代となる。
社長交代の理由について、一部報道では「26年度から新しい中期経営計画が始まるのを区切りとした交代」といった見方がされている。退任する増田社長は、会見で「構造改革の成果も出てきたため、新たなスタートという位置付けで交代を決めた」と語っている。
だが、現中計を区切りとするならば、中計最終年度の25年度末まで増田氏が社長を続けるのが自然で、このタイミングでの社長交代には違和感がある。カシオのベテラン社員は「不採算事業から手を引いたり人員を減らしたりして、改革の土台ができつつあった。『ようやくこれから』という時に社長を代えるのは不自然だ」と首をかしげる。
高野CFOの社長就任により、カシオでは非創業家の社長が2代続くことになるが、樫尾家の影響力が保持されるのかどうかも気になるところだ。創業家が“院政”を敷くことはあるのだろうか。
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