対象者全員が参加できる日時を調整し、実際に参加した人全員が満足する会を目指してしまうからです。
たとえ、あなたに一任されていたとしても、それぞれ仕事を持つ対象者全員が参加できるという日時は限定されますし、対象者の好みもそれぞれ異なりますから、「どこがいいか」と頭を悩ませるわけです。
これは、部下を集めた会議やチームのメンバーが集まるミーティングなどでも同じで、
「今回のプロジェクトはこの方向で行きます」
という決定を下すには、思った以上に勇気がいるものです。
前置きが長くなりましたが、全員とは言わないまでも、角を立てず最大公約数の賛同者を得るには、同意を求める言葉がけが必要になります。
心理学の技法に「ミルトンモデル」というものがあります。
アメリカの心理学者、ミルトン・エリクソンが使用していた言葉を、教え子たちが分析したもので、人が誰しも持っている無意識の部分に影響を与える技法です。
その一例を挙げます。
A「来週末、○○くんの送別会を開きます」
B「来週末、○○くんの送別会を開こうと思うのですが?」
C「来週末、○○くんの送別会を開こうと思うのですが、中華料理店とイタリアンレストラン、どちらがよろしいでしょうか?」
Aでは唐突すぎます。送別会の開催に異議はないとしても、「えっ、来週末? 忙しい時期に」と反発を招きかねません。Bはそれを婉曲な言い方にしただけです。
その点、Cは、お店の選択を迫ることで、「来週末、送別会が開かれる」という情報を、対象者に無意識のうちに受け入れさせています。
「夏休みの家族旅行、国内がいい? それとも海外がいい?」
「新商品のパンフレットを作ろうと思うのだけど、A案とB案、どちらがいい?」
これらも、「夏休みは家族で旅行に行く」「新商品発売に合わせてパンフレットを作成する」という前提を、無意識のうちに受け入れさせ、相手の頭の中を「どっちにしようか」という意識でいっぱいにさせる表現になります。
「○○したいのですが△△と□□どちらがいいですか?」、人は△△か□□かの選択に気を取られ、○○することに反対しない。
いかがでしたでしょうか。いずれも賢く品よく人柄もよく見られるようになるための“黄金法則”のようなものです。「決めのひと言」を参考に、ぜひ、試してみてください。