自分の頭で考えて選択する力を養う
最も重要な人生の土台とは?
子どもの「やりたい」という気持ちを尊重することは、もちろん大切です。しかし、「やるべきこと」から目を背けてしまっては本末転倒です。
プログラミング好きな10歳の子の例で言えば、夜中まで好きなことに没頭できるのは、一見すると自由な環境です。しかしその結果、翌日の学校生活にも影響が及んでいます。これは、自由というよりも、生活の土台が揺らいでいる「放任」の状態と言えるのではないでしょうか。
自由とは、単に「好きなように振る舞うこと」ではなく、明確な枠組みやルールの中で、自分の意思で選択し、行動することを指します(心理学者エドワード・L・デシらが提唱した「自己決定理論」による)。
つまり本当の自由とは、守るべきルールの土台があって初めて成り立つのです。そして、子どものうちに身に付けないと、大人になって取り返しのつかないことになる最も重要な人生の土台とは、「基本的な生活習慣」だと私は思います。
「どんなに遅くても小学生のうちは夜10時には寝る」といった生活習慣があるからこそ、その時間までに何をすべきか、子どもは自分で考えるようになります。「まず宿題を片付けよう」「今日はゲームをしてもOKな日にしよう」「来週の発表会に向けた準備をしよう」などと、自分の頭で考えて選択する力が養われるのです。
未就学児、幼稚園や保育園の環境を振り返ってみましょう。園には、遊具の片付けや順番を守るといった細かなルールがいくつもあったと思います。ルールがあるからこそ、幼い子どもたちは安全な環境の中で心地良く、そして本当の意味で自由に遊ぶことができたはずです。
このルールが小学生になったからって、急に「ナシ」になることはあり得ません。ルールも何もない無法地帯で、子どもが安心して心から自由に遊び、学び、成長できるなんてあり得ません。
「自由」と「放任」の線引きは、子育てにおける非常に重要なテーマです。私は、「『そのまま』でいいけれど、『そのまま』ではいけない」という言葉で表現しています。
尊重すべき「そのまま」
子どもの個性や好奇心、興味関心は、その子の内側から湧き出るエネルギーの源であり、最大限に尊重し、伸ばしてあげるべきもの。
放任してはいけない「そのまま」
基本的な生活習慣や、やるべき責任。睡眠、食事、片付け、宿題といった、誰もが少し面倒に感じること。これらは子どもの心と体の土台を作る、何よりも重要な要素。