この男性の奇妙な習性を活かしたアイデアによって、年間清掃費は8割も減ったそうです。「トイレは清潔に」などと貼り紙を出すよりも、はるかに効果的でしょう。
また、お店のレジ前の床に、順にお並びくださいという呼びかけを示す足跡のステッカーを見かけることがあります。これもナッジです。
新型コロナウイルスの感染が広まってからは、対策のためのさまざまなナッジが見られるようになりました。銀行のロビーなどでは、ソーシャルディスタンスを確保するために、3人掛けソファの中央にマスコットのぬいぐるみを置いている例が見られました。
そのほか、公共施設でもアルコール消毒液の設置場所を矢印マークで表示したり、非接触式検温カメラの手前に足跡のステッカーを貼ったりするなど、新型コロナウイルスという厄災は、私たちの日常空間にナッジ活用を一気に広めることになりました。
督促状の文言を変えるだけで
税収増につながった
税金を滞納していると、延滞金が発生するとともに督促状が送られてきます。そこには未納税額とともに「早急に納付してください」といった簡潔な文面が添えられています。
未納者に対して早く払いなさいと伝えるのが督促状の役割ですから、たしかにこれ以上の文面や仕掛けは本来必要ありません。とはいえ、これで未納者が素直に応じてくれるのであれば、税務当局も苦労はないでしょう。
そこで、型どおりの督促文に、ある情報を加えることで税金の納付率アップに成功した例があります。イギリス「行動インサイトチーム」の取り組みの一環としておこなわれたものです。
では、どのような情報を加えたかというと、納税通知書に同地域の住民の納税率を記載することにしたのです。その結果、滞納率は減少し、税収増につながりました。
この試みが成功したのは、地域住民の納税率を伝えることで、ほとんどの人は期限内にきちんと納付している事実を知らせ、未納者に「自分もそうしなければ」と思わせたからです。







