窒素充填が人手不足の現場にもたらす大きな効果

 包装機器メーカー・寺岡精工の矢野光隆氏は次のように語る。

ドラッグストアで最近よく食料品を見かけるのはなぜ?→「そういうことか!」と思える納得の理由

「窒素充填、つまりMAP(Modified Atmosphere Packaging)は、容器内の窒素・二酸化炭素・酸素の比率を調整し、微生物の増殖や変色を抑えることで賞味期間を延ばす技術です。日本では2~3日延長が現実的なレンジとされ、廃棄削減や商品並べ替え頻度の低減、製造現場の人手不足対策にも効果があります」

 この技術は欧米では一般化しているが、日本ではこれまで包材コストや機械導入コスト、多様な容器形状を統一する難しさから普及が遅れてきた。

 コンビニでは既に一般化されているが、スーパーやドラッグでの導入はまだ発展途上にある。

 しかし人手不足と物流費上昇を背景に、いまスーパーでも導入が進みつつある。そのひとつがイオンで、窒素充填惣菜の展開が始まった。

ドラッグストアで最近よく食料品を見かけるのはなぜ?→「そういうことか!」と思える納得の理由イオングループのまいばすけっと「生芋こんにゃく使用のピリ辛煮」159円(筆者撮影) 

 スーパー関係者は「通常包材より10円高くても、廃棄・人件費・値引きを含めた総コストが高騰しているなか、窒素充填を適用することは、むしろプラスになります」と話す。

食品を“利益を生む仕組み”へ

 ドラストが食品化を進めるのは、「薄利でも来店頻度が上がるから」だけではない。食品によって在庫効率を高め、利益を生む仕組みに変えられるからである。

 その先には「鮮度・廃棄・人手不足」という大きな壁がある。窒素充填という技術はその有効な解決策としているのだ。ドラストだけでなく、今後のスーパーにおいても同様で、無視出来ない領域でもある。

 食品シフトを成功に導くには、在庫における利益確保はもちろんのこと、物流、商品設計、人員配置まで含めた総合的な改革が不可欠であり、単なる来店客数の増加の目的だけではないことが裏付けられる。