食品がとにかく安い! コンビニエンスストアやスーパーがうらやむドラッグストアの“客寄せ”手法を可能にするのが、医薬品や化粧品の高い粗利率と、ローコストオペレーションだ。コンビニがまねできないドラッグストアのもうけの秘密はどこにあるのか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
「大手メーカーのカップラーメンを78円で売るんだもんな。たまったもんじゃないよ」――。すぐ隣に大規模なドラッグストアが立地する大手コンビニエンスストアの男性オーナーは、こう嘆く。
最近のドラッグストアは、ペットボトル飲料や菓子はもちろん、野菜や肉類、おにぎりや弁当、サンドイッチまで販売している。しかも、コンビニやスーパーと比べると、価格がかなり安い。どうしてこんな芸当ができるのだろうか。まず下図をご覧いただきたい。
これはドラッグストアで現状最大手のツルハホールディングス(HD)の主な商品の粗利率を、コンビニ、総合スーパー(GMS)とで比較したものだ。
ドラッグストアの食品の粗利率はわずか15.1%で、30%台のコンビニの約半分だ。「これで人件費を考えれば、手元に残る利益は2~3%程度ではないか」(ある食品スーパー関係者)という超薄利である。
その一方で、しっかり稼いでいるのが、医薬品と化粧品だ。特に医薬品の粗利率は、OTC医薬品(大衆薬)と調剤を合わせ42.3%。調剤のみでは37.5%だが、ツルハHDは調剤よりもOTCの売り上げが多いため、OTCのみの粗利率はさらに高い。
実際に、OTCはめちゃくちゃもうかる商材だ。例えば、第一三共の解熱鎮痛薬「ロキソニンS」のメーカー希望販売価格は12錠で648円(税抜き)だ。ところが、病院で処方された場合のロキソニンの公定薬価は1錠14.5円。12錠に換算しても174円にすぎない。
おまけにロキソニンのジェネリック医薬品の公定薬価は1錠5.6~9.6円で、成分はほとんど変わらない。そしてジェネリックメーカーはこれでも利益が出る。「製造コストも先発薬と大して変わらない。大半のOTCの原価は数パーセント程度だ」と、製薬会社の関係者は打ち明ける。
この利益の塊であるOTCを、ドラッグストアは格安で仕入れている。あるOTCメーカーの関係者によれば、「大手チェーンでは、販売価格に占めるドラッグストアの取り分は6割がスタートライン」。ここから交渉が始まり、さらにメーカー側は値下げを要求される。ドラッグストアの取り分が7割を超えるケースも珍しくなく、値下げの代わりに、商品の売れた個数に応じて“販売奨励金”をメーカーが支払うケースもあるという。
特売が大好きなドラッグストアでも、OTCを値下げする例は「10年以上前はあったが、今は少ない。経営も苦しくなるし、薬の安売りは消費者のイメージを下げる」(前出のOTCメーカー関係者)。インバウンド激戦区である大阪・心斎橋などの一部地域を除き、OTCに関してはドラッグストア間で安売り競争はせず、“共存共栄”のスタンスを貫く。こうして出た利益が、食品を安く売る源泉となる。
ではなぜ、わざわざ食品を薄利で売るのか。ツルハHDの堀川政司社長は、「ドミナント(集中出店)をすれば、1店舗当たりの商圏人口は減る。だから、食品を販売してお客さまの来店頻度を高め、売り上げを確保している」と説明する。