たしかに、南海ホークスは、この時祝祭の絶頂を体験した。御堂筋の「20万人以上」も、仇討ちの成就につうじる解放感を、あじわっている。だが、南海にたくされた反・読売、反・東京という怨念も、同時に解消された。南海に関するかぎり、ジャイアンツへのうらみは希薄化されたのである。

 じっさい、南海は翌年以後、観客動員の数をおとしだす。しばらくの間は強いチームでありつづけた。だが、人気は低迷しはじめる。ファンをかりたてた怨念が発散されたせいだと、どうしても思えてくる。

 いっぽう、阪神はセ・リーグで対読売戦を、日常的にたもってきた。そして、このチームからは、いつも苦杯をなめさせられている。煮え湯をのまされつづけてきた。そのため、以前は南海へ投影された反・読売感情を、かわってうけつぐようになる。関西人の反・中央意識がたくされる新たなにない手として、こんどは阪神が浮上する。