スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。その刊行を記念して、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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心が「サル」になってしまう
――本書では、マルチタスクを実践する状態は「モンキーマインド」を体現していると指摘されています。このモンキーマインドとは、具体的にどのような精神状態を指すのでしょうか。
栗木さつき氏(以下、栗木):これは仏教から来る概念で、マインドフルネスの逆のような状態だと考えてもらえばいいかと思います。おサルさんには悪い言い回しですが、心がサルのように落ち着かず、自制の効かない精神状態を指しています。
――集中が途切れて、自制がきかなくなっているときみたいな感じですね。
栗木:はい。まさに一点集中とは正反対の、落ち着きがなくせわしない精神状態です。
マルチタスクでモンキーマインドの状態を続けていると、何にも集中できず、行動のすべてが中途半端になってしまいます。心だけはバタバタと忙しくても、じつは仕事は進んでいないということになってしまいます。
『一点集中術』では以下のように説明されています。
そうした精神状態は「フロー」や「没頭」した状態の正反対だ。このことからも、フロー体験をするためにはシングルタスクを実践しなければならないことがわかる。――『一点集中術』より
気がつけば自制を失っている
――栗木さんは、このモンキーマインドになっていると感じるときはありますか。
栗木:私自身がとくに自制が効かなくなるのは、たとえば、お酒を飲みすぎたときです。やめとこうと思っても楽しくて飲みすぎてしまって、翌日とても後悔します。
あるいは、スマホで無限に流れてくるコンテンツをえんえんと見てしまうときも、モンキーマインドに近いかもしれません。
――『一点集中術』では、意志力ではこうした誘惑にブレーキをかけるのは難しいと書かれていますね。
栗木:はい。自分の意志だけではなかなかブレーキがかけられないため、ある程度フェンスとかバリアを設ける工夫が非常に重要だと著者は説いています。
たとえば、スマホを別の部屋に置いてしまうとか、大事なことに集中する時間をスケジュールに入れて、その間は会議室にこもってしまうとか。本ではそうしたいろんな工夫が紹介されています。
「一点集中の時間」を積み重ねる
――モンキーマインドと対照的に、一点集中によって得られる「フロー」のような濃密な時間を感じられることはありますか?
栗木:ごく稀にですが、翻訳の仕事に集中しているときに感じることがあります。原稿の内容に没頭して、難しい概念でも、こういうことを言っているのかなというのがすっとイメージできたり。
あとは、趣味のマラソンで40km以上走ったときは、もう決死の覚悟で、それ以外のことは考えられない状態でした。これなんかは、まさにフロー状態だったと思います。
ふだんはスマホやテレビなど集中の邪魔になるものに囲まれているので、フローのような感覚を体験できたときはすごく充実感があります。そうした一点集中する時間の積み重ねが、いい人生につながるように感じています。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)









