スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。その刊行を記念して、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

実は頭がいい人の「最高の休息法」ベスト1Photo: Adobe Stock

意識的に切り替える

――本書では「マルチタスクが得意」と言っている人は、無意識にタスクを切り替えまくっているだけで、実際には効率が悪い、ということが語られています。栗木さんはタスクの切り替えは多いほうですか?

栗木さつき氏(以下、栗木):会社で働いていらっしゃる方に比べると、誰かに話しかけられるなどの外的要因は少ないので、注意を向ける先を切り替える頻度はそこまで高くないと思います。

 ただ、『一点集中術』にも通じるのですが、タスクの切り替えをどう扱うかが大切かなと思います。無意識に頻繁に切り替えるのは集中を削いでしまいますが、意識的に切り替えれば「次の一点集中」に備えるためのリフレッシュになります

 以前、『SWITCHCRAFT 切り替える力』という翻訳書を手がけた際に、この「意識的な切り替え」が集中を長持ちさせる方法だと学びました。

昼休みはただの「食事の時間」ではない

――無意識の頻繁な切り替えは避けるべきだが、「意識的な切り替え」には集中力向上の効果があるということでしょうか?

栗木:おっしゃる通りです。タスク・スイッチング(タスクの切り替え)をしょっちゅうしてはいけないというのは『一点集中術』でも繰り返し書かれていますが、あえて行う切り替えは、脳によい効果をもたらすという考え方です。

 たとえば仕事をしていて煮詰まってきたときに、パシッと切り替えて他のことをする。休憩をとって歩いたり体を動かす時間を意識的に取ることで集中力が上がると『SWITCHCRAFT 切り替える力』には書いてありました。

『一点集中術』にもこう書かれています。

 目の前の作業に没頭したいのなら、定期的に休憩をとろう。
 一点集中術は、最優先の作業から少し離れる時間を予定に組み込むことで大きな効果を発揮する。
 もしあなたが1日の大半を椅子に座ってすごしているのなら、この休憩時間を利用して体を動かそう。室内で仕事をしているのなら、ちょっと外にでて散歩をしよう。肉体労働に従事しているのなら、身体を休める時間を設けよう。
 5~10分もあれば、十分にエネルギーをとりもどすことができる。――『一点集中術』より

――休憩時間は単なる休みではなく、次の集中に備えるための「切り替え時間」だと捉えることができそうですね。

栗木:はい。お昼休みなどは、ご飯を食べるという目的以外に、メンタルを切り替えて午後の仕事に備えるという役割があります。

 オフィスにいると、つい忙しくて外に出るのをためらいがちかもしれませんが、パッと外にご飯を食べに行くと、その後また切り替えて働けるはずです。

 外に出て自然に触れ、軽く体を動かすことは、単なる気分転換ではなく立派な休息です。適度な休息が注意力の回復や創造的思考の促進につながることはさまざまな研究で示されています。休まず働き続けるより、リズムを切り替えて休息をとるほうが、結果としてその後のパフォーマンスが格段に高まります。

(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)