AI規制論争、「最恐モンスター」めぐり対立アンソロピックの共同創業者であるジャック・クラーク氏はAIを「えたいの知れない生き物」と呼ぶ
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 米人工知能(AI)新興企業アンソロピックの問題は、AIを巡る熱狂の中で独り冷静な存在であることかもしれない。

 同社の共同創業者であるジャック・クラーク氏は先週、AI業界の現状に対する不安についてかなり個人的なエッセーを執筆したことで、ホワイトハウスから異例の非難を浴びた。

 クラーク氏は13日、「間違いないのは、われわれが扱っているものは単純で予測可能な道具ではなく、真にえたいの知れない生き物だということだ」とし、「全ての最も優れたおとぎ話と同じように、この生き物はわれわれ自身が作り出したものだ。これが現実のものだと認め、われわれ自身の恐れを克服することによってのみ、それを理解し、それと折り合いをつけるとともに、それを飼いならして共存する方策を見いだすための機会を得るのだ」と記した。同氏のアンソロピックでの正式な肩書は方針責任者だ。

 このエッセーは、同氏が今月行った、ほとんど注目されなかった会議でのスピーチを基にしたもので、即座にドナルド・トランプ米大統領のAI顧問デービッド・サックス氏のほか、マーク・アンドリーセン氏やキース・ラボイス氏といったハイテク分野の著名人から批判された。

 意見の相違の核心にあるのは、AIをどう規制するか、そもそもAIを規制すべきかという議論だ。今やその問いの両側にいる人たち全員が、モンスターを見ているような状況にある。彼らは、どのモンスターが最も恐ろしいかという点で意見が一致していないだけだ。

 AIを巡る国民的議論は非常に長い間、「ターミネーター」式の黙示録を通じてAIの台頭を阻止しようとすることに関するものだった。

 現在、AIが科学的に興味深いものから経済的に有益なものになるにつれて、この悪役のキャストはさらに多様化している。