近年、出産方法や授乳方法が、発育中の乳児の腸内細菌叢にどう影響するかに注目が集まっている。脳と腸内に生息する細菌との関連性の理解も深まり、免疫系やストレス関連システム(視床下部――下垂体――副腎のHPA軸を含む)は特に注目されている。腸内細菌の違いは不安障害や大うつ病性障害と相関関係があることがわかっているが、妊娠中や産後、腸内では何が起こっているのか?
研究によると、妊娠期間中に腸内細菌は変化する。妊娠後期には脂肪組織でのエネルギー貯蔵を促進し、胎児の発育を助けるような変化が起こる。親の腸内細菌の乱れが周産期のメンタルヘルスや、出産時のストレス反応とホルモンの変動の微妙なバランスに影響する可能性も示唆されている。しかし、研究者たちはまだこれらの要素がどう影響するのか、本当に影響するのかを解明するには至っていない。
胎児の細胞が
母親の体内に残る!?
胎児の細胞は親の体内で具体的に何をしているのか。胎児の細胞は親の体内に定着し、臍帯が切断された後も長期間にわたって残ることがある。胎児性マイクロキメリズムという現象を説明する科学は驚異的だ。
この名称は、複数の生き物がくっついた神話上の怪物キマイラに由来する。ギリシャ神話ではライオンの背からヤギの頭が突き出し、尻尾が蛇という姿で、もはや自分の遺伝子だけで構成された身体ではないということだ。
これは細胞輸送(セル・トラフィッキング)とも呼ばれる一種の交換で、一律に起こるわけではないが、赤ちゃんは親だけでなく、年上のきょうだいや祖母の細胞さえ受け継ぎ成人期まで保持する。
親は自身が分け与える以上の細胞を受け取る。2017年に学術誌『ネイチャー・レビューズ・イミュノロジー(免疫学)』に発表された論文の要約では、妊娠中に親の体内に“移植”される胎児細胞は、“妊娠による偶然の記念品”などではなく、明確な進化的意義を持つだろうという。目的は親の免疫寛容を調整し、胎児への拒絶反応を抑え、妊娠を重ねるごとに出産の成功率を高めることかもしれない。







