慢性的な過労状態へ
しかも、キリがいいところまで頑張ったからといって、その人が翌日「昨夜頑張った分、今日は午後半休にしよう」というかというと、おそらくそうはしないでしょう。そして、またキリのいいところまでやってしまうのです。
そうすると、延々とキリの良さを追い求め、本来自分が予定していたよりも常に多い作業量が慢性的に続くことになります。これが、うつ病になりやすくなる理由です。
対策は「時間で区切る」こと
では、どうすればよいのでしょうか? 私は「時間で区切る」ことをオススメします。
「仕事は●●時までしかやらない」と決めるのです。時間なら明確にわかります。決めた時間を超えたら、一切やりません。
例えば、私自身は文章を書く仕事をしていますが、「時間で区切る」ことをかなり徹底しています。その結果、たとえ「あと1文で全ての原稿が終わる」という状況でも、その1文を残して翌日に回します。
以前は私もキリがいいところまでやろうとして無理がたたり、それがすべての原因ではありませんが、うつ病になった経験があるからです。ですから、キリが悪いところで、時間で区切ってやめることを徹底しているのです。
「キリ悪く終える」もう一つのメリット
キリがいいところまでやるデメリットはもう1つあります。それは、翌日の仕事の効率が落ちることです。
キリがいいところまで終わらせるということは、そこで一区切りついているわけです。すると、翌日に取りかかる仕事は、また「新しい仕事」になります。
もしキリが悪いところで終えていれば、翌日は「続き」からなので、やることも分かっており、すぐに取りかかれます。しかし、キリよく終わらせてしまうと、翌日はまた新しいことをゼロから考え出して動かなければならず、仕事の始まりが少し億劫になり、始動に時間がかかってしまうのです。
あえて途中で終わらせるといい
例えば、昨日無理をして「第1章」をキリよく終わらせたとします。もし第1章の途中で残しておけば、翌日はその続きから始められるので、スムーズに仕事に取り組めたはずです。
しかし、無理して終わらせた結果、翌日は疲れた状態で、全く新しい「第2章」を始めなければなりません。「第2章はどう進めようか」とゼロから考えるのは、始動するためにかなりのエネルギーを必要とします。
「キリが悪い」ほうが効率が上がる
このように、キリよく終わらせると、翌日の仕事の取っかかりが悪くなってしまいます。
逆に、キリが悪いところで終わらせておけば、例えば「あと3行残っている」状態だと、気持ちとしては「やりたかったけれど、ルールだからやめた」となっています。頭の中では「あの3行を早くやりたい」と思っているため、翌日はすっと仕事に取りかかれます。
一度取りかかってしまえば、体は動きます。人間は、ゼロの状態から体を動かすよりも、すでに動いている状態で次のことを始めるほうが楽なのです。
ですから、前日の残りを終わらせる勢いを利用して、そのまま「第2章」のスタートも切れるため、キリがいいところまでやる人よりも効率が良く、疲れもたまりにくいのです。
今すぐ「キリが悪いところ」でやめてみよう
ですから、「キリがいいところまでやろう」と思っている人は、今日からでもその習慣を変えてみてください。
「キリが悪いところ」でやめるのです。
むしろ、その方が心身の健康にも、仕事の効率にもメリットがあります。そして、キリの良さの代わりに「時間」で仕事をコントロールするようにしてください。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。








