英語を学び始めたころ、ある人からこんな話をされた。たとえ話せない言語であっても、ジェスチャーだけで30分コミュニケーションができたら素晴らしいと。なぜなら人の気持ちを掴むのに必要なのは実は言葉ではないというのだ。つまり、言語よりも内面を磨くことが大切と言いたかったのかもしれない。
それは一面では真実だと思う。例えば、いくら日本語が流暢に話せるとしても、誰もが魅力的なわけではない。会話的に要領を得ない人や、退屈な人もいる。それが英語であっても同じことだ。文法と表現方法を両方意識しながら、日本語にも立ち返りどんな会話が現地の人の心を掴むのかを意識して勉強していった。
会話は録音して文字に起こし
言葉の持つ意味を可視化する
文法の勉強は主に自宅の最寄り駅にあるカフェでやることが多かったのだが、ある日僕が座っていた席の隣で、英会話の個人レッスンを受けている女性がいた。その人がトイレに立った瞬間を見計らって、先生の外国人に声をかけた。
“I’m learning English, can I take your lesson?”(僕にも英語を教えてもらえませんか)
突然のお願いだったが無事OKをもらい、その方にはその後、週に1回ほどマンツーマンで会話の授業をしてもらうことになった。
会話は録音し、自宅に帰ってからパソコンで文字起こしする。このやり方はけっこう効果があった。その場では聞き取れたと思った単語が全然違っていたり、聞き流していたところに重要なイディオムがあったりした。
特に重要だと思った部分はノートに書き写す。ネガティヴな意味がある単語の横にはガイコツの絵を、ポジティヴな意味の単語の横には犬の顔を描いたりした。視覚的なイメージと同時に単語を結びつけることで記憶に留めることを意識した。
単語を覚えるために活用したのがお風呂の時間だ。子ども用のお風呂用お絵かきクレヨンをネットで探して買って、浴室の壁に英単語をびっしりと書く。湯船につかりながらずっとそれを見て暗記するなんてこともした。







