YOASOBIPhoto:Jun Sato/gettyimages

令和元年(2019年)に『夜に駆ける』でデビューして以降、令和の音楽シーンのトップを駆け抜けている音楽ユニット・YOASOBI。彼らは90年代とも00年代とも異なる“令和ならではの方程式”によってヒット作を連発しているという。さまざまなコンテンツについて分析を行う博報堂DYグループコンテンツビジネスラボが、YOASOBI結成のきっかけから、楽曲の特徴、その広がり方について解説する。※本稿は、博報堂DYグループコンテンツビジネスラボ『令和ヒットの方程式』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。

小説を音楽にするユニット
としてYOASOBIを結成

 ここでは、令和の音楽シーンでヒットがどのような構造で生まれているのか、音楽シーンを席巻しているアーティストを例に紹介していく。なお、次の3つの基準を満たすアーティストとしてYOASOBIを選定した。

(1)Billboard Japan Hot 100のトップ10に初ランクインしたのが令和以降
(2)グローバルチャートやグローバルでの活動実績として何らかの記録を残している
(3)楽曲制作・楽曲配信の手法に、アーティストならではの工夫ポイントがある

 YOASOBIは、コンポーザーのAyase、ボーカルのikura(幾田りら)からなる“小説を音楽にするユニット”だ。2018年頃からボカロPとして活動していたAyaseのもとに、小説投稿サイト「モノガタリードットコム」のスタッフから、「小説を音楽にするユニットを作りたい」というオファーが届いたことで、プロジェクトが始動した。当時、学生でありながらYouTubeやSNSに弾き語り動画をアップしていたikuraにもボーカリストのオファーが届き、YOASOBIの結成に至る。

 2019年、デビュー曲《夜に駆ける》が、若者を中心に大きな反響を呼び、ストリーミングや各種チャートを席巻し、その特徴的なコンセプトへの注目も相まってマス媒体での露出も増え、認知が急拡大していった。

 2023年には、アニメ『【推しの子】』のオープニング主題歌《アイドル》のストリーミング累計再生回数が、史上最速で4億回を突破。さまざまなグローバルチャートでJポップの歴史を塗り替える記録を次々と打ち立てる世界的ヒットとなった。

「コンテンツ調査」のデータによると、現在の国内視聴者層は約647万人で、特定の性年代に偏りがなく、まさに老若男女に愛されているアーティストと言える。視聴者には、YouTubeやテレビ番組、友人・家族の口コミから受動的に情報を得る人の割合が高く、このことからも音楽好きに限らない層にまで浸透していることがわかる。