ミニ新幹線の車両開発は難易度が高い。ほとんどの列車は東北新幹線と連結して走行するため、列車の分割併合装置を搭載しているが、新幹線は1両あたり全長25メートル、幅3.4メートルに対し、在来線は全長20メートル、幅3メートルと、ふた回りほど小さい。
大は小を兼ねられないので在来線サイズを採用する必要があるが、そのままではホームと車両に約20センチの隙間ができてしまうので、停車時に展開するステップを装備しなければならない。
線路の規格も大きく異なる。新幹線の最小曲線半径は原則4000メートルだが、在来線には半径300メートルのカーブもある。高速走行安定性と曲線通過性能は、鉄道車両にとって相反する性能であり、設計が難しいところだ。
勾配も新幹線は原則15パーミル(1000メートルあたり15メートルの変化)だが、奥羽本線(山形新幹線)は最大38パーミルで、25パーミルの勾配が17キロも連続する区間がある。新幹線用の高出力モーターがあるため上りは問題ないが、下りを安全に走行するには抑制ブレーキ(自動車でいうエンジンブレーキのようなもの)が必要だ。
また、新幹線は人や車の立ち入りを想定していないが、踏切がある在来線では非常時の制動距離を600メートル以内としている。電圧は新幹線が交流2.5万ボルト、在来線が交流2万ボルト、信号装置も新幹線がデジタルATC、在来線がATS-Pと異なるため、両方に対応した設備が必要になる。
さらに、車体が小さい分、パンタグラフカバーも小型にせざるを得ないので騒音対策が不利なこと、山形新幹線は板谷峠、秋田新幹線は仙岩峠という豪雪地帯に対応した着雪・着氷対策を要するなど特殊な事情もある。このさまざまな要素を、在来線サイズの車両に詰め込むのだから、大変さが分かるだろう。
「400系」の技術的限界を
乗り越えて登場した「E3系」
そんな最初のミニ新幹線車両が1992年7月に開業した山形新幹線の「400系」だ。新在直通運転は国鉄時代から研究されており、民営化前年の1986年には運輸省に「新幹線と在来線との直通運転構想検討会」が設置されている。これをJR東日本が受け継ぎ、1988年8月に福島~山形間の改良に着手した。
車両開発は1989年春に着手し、1990年11月にプロトタイプが完成。開業まで試運転と改良を重ねた。上記の困難を1年半でまとめ上げたのだから、担当者とメーカーには頭が下がる。







