「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。読者からは、
「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めて!」
「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」
「簡単だけど役立ちます」

といった喜びの声が届いています。発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

お金が貯まらない人は、どこで「調味料」を買っているのか?Photo: Adobe Stock

お金が貯まらないのは「イイもの依存」かも

 そんなに贅沢や衝動買いをしていないはずなのに、全然お金が貯まらない。そんな方は「イイもの依存」になっているかもしれません。
 これは私の造語で「イイものを買わないと、自分の生活は豊かではないという思い込み」のことです。

 例えば、

 ・高級食料品店で調味料を揃える
 ・ちょっといいコーヒーショップを毎日利用する
 ・年会費の高いクレジットカードを持つ
 ・スマホのカメラで充分なのに本格的なカメラを買う
 ・多すぎる外食、旅行
 ・毎回グリーン車に乗る
 ・ブランド品にこだわる
 ・常に最新のスマホ機種に替える
 ・頻繁な美容室通い

 など、本当は必要ない、もしくはもっと安価で準備できるにもかかわらず、少しだけイイものを買ってしまうのがイイもの依存です。
 普通のスーパーの普通の塩で十分なのに、高級スーパーでしか手に入らないフランス産の天然塩にこだわるなど、ちょっとだけイイものを、ちょこちょこ買っていないでしょうか?

 FPとして多くの家計を見させてもらっていますが、こういうご家庭、結構いらっしゃいます。

イイもの依存は、貯金にじわじわとダメージを与える

 イイもの依存の原因は、節約や節制をする自分を情けなく思う心。節約のために、グリーン車ではなく自由席にしたり、安いスーパーで買ったりすることを、「情けない」「自分らしさがない」と思い込んで、ついワンランク上の買い物をしてしまうのです。

 人によっては、自己肯定感の低さの埋め合わせのために、そういった買い物をしているかもしれません。このように知らず知らずイイもの依存になっていて、貯金への大きなダメージにつながっていることが多くあります。

ステータスのある自分が好きだった

 私は極度のイイもの依存でした。イイものを買わないといけない、イイものを買えない自分は情けないと思い込ませるマーケティング戦略にまんまとハマっていました。

 10年近く前のことです。当時、外資系生命保険会社でマネージャーの立場でした。マネージャーと言っても内情は、カードローンで200万円、リボ払いの残高で100万円の合計300万円の借金。

 それにもかかわらず、毎晩のようにイタリア料理店で「おまかせ」で食事をしていました。メニューから自分で選ぶのではなく「食べるものはシェフに任せます」というスタンスです。1回の食事代は安くても2000円、高い日は5000円を超えていました。これがほぼ毎日です。

 贅沢な食事が楽しめる自分を周りに見せつけたかったのですが、今考えると顔から火が出るほど恥ずかしい過去です。

 決しておいしいモノを食べたいのではないのです。ステータスのある自分が好きだったのです。いや、もっと言うと、「おまかせ」で注文できない自分なんてかっこ悪い、情けないとまで思考が進んでいました。完全にイイもの依存です。はっきり言って見栄のための消費でした。

イイものがなくても、人は幸せになれる

 しかしある人との出会いを境にその感覚は大きく変わりました。
 資産が1億円を超えるSさん。お金持ちにもかかわらず質素な生活をされていました。最新のデバイスもなければ、移動は高速道路を使わず一般道路。服もブランド品ではありません。それでもSさんはすごく充実した生活をされていました。

 そのSさんと知り合った時に、イイものを買わない自分、イイものを使わない自分は情けないと勝手に思い込んでいたことに気付いたのです。イイものを選ばなくても恥ずかしいことでもなんでもないと気付いてからは、気持ちがとてもラクになりました。

イイもの依存から脱却するには?

 イイもの依存から卒業するには、まずは、イイもの依存に陥っていることに気付くこと、本人の思い込みを解除することから始めます。

 そのために有効な方法は、第三者の目です。家族やパートナー、医師、FPのようなお金の専門家など、誰でもいいので、自分の出費について指摘してくれる人の存在がとても大切です。

 私の場合は、先述の資産家Sさんとの出会いで気付きましたが、第三者からの指摘や気付きは大変有効です。私のnoteやYouTubeのイイもの依存関連の情報を見て、自分がイイもの依存であると気付いたと言う方もいました。

 この記事を読んでいる方の中にも、イイもの依存の人がいるかもしれません。「私は大丈夫」「ぼくは違う」と言い切る前に、自分の買い物の傾向を思い出してみてください。

(本記事は、『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』から一部抜粋・編集したものです。)