女性が探偵事務所に調査を依頼したところ、浮気は事実で、証拠写真も押さえてもらった。

「もう介護なんてやってられない。無理」と女性は3年ほど前に離婚を申し出た。

 結婚から20年目、2人に子どもはいなかった。夫は不倫を認めて謝罪。父親から相続した家は財産分与の対象とならなかったが、夫の預貯金1億円超を分割した約5000万円と浮気の慰謝料約300万円をもらって離婚したという。

 これらの離婚を担当した日原聡一郎弁護士は「介護がきっかけとなる熟年離婚の相談は最近、コンスタントに寄せられ、増えている」と語る。

配偶者控除が理由で
離婚できない66歳女性の場合

 介護をめぐり、バトルになっても離婚できない熟年夫婦もいる。

「夫を介護するのも嫌だし、夫に介護されるのも嫌だから離婚したい」

 中部地方で資産家として知られる男性(68)の妻(66)は3年前、こう離婚を切り出した。

 暴力を振るわれたり、浮気されたりしたわけではないが、言葉でネチネチと責め立てるモラハラに耐えかねての決断だった。

 だが、男性や成人した子ども3人が離婚に猛反対し、果たせずにいる。

 資産家なので離婚すれば、配偶者控除が使えなくなり、相続税の額が億単位で跳ね上がり、一族の財産が目減りするからだという。

『ルポ 熟年離婚』『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞取材班、朝日新聞出版)

 弁護士と相談した上で、妻は自宅を出てマンションに移った。裁判所に離婚が認められやすくなる条件の1つでもある「5年以上の別居」という実績作りのためだ。

 妻は弁護士を介し、「別居中、互いの介護は一切、しない」「別居中、自分が死亡しても夫の墓には入らない」などの念書を男性と交わしているという。

 厚生労働省の介護保険事業状況報告(2024年)によると、要介護(要支援)認定者数は約723万人。うち在宅で介護サービスを利用している人は約435万人に上る。ピークを迎える2040年に約465万人になると推計され、不足する介護人材は約57万人に上るとされる。

 同省の国民生活基礎調査(22年)によると、介護者の続き柄を見ると、同居人が45.9%で、女性が68.9%と男性(31.1%)の倍以上となっている。